特別展・特別陳列
特別展
第58回 正倉院展
本年は聖武天皇の1250年目の御遠忌(ごおんき)に当たります。天皇の崩御より四十九日目に、お后の光明皇后が天皇遺愛の品々600点ほどを東大寺大仏に献納しました。この宝物は正倉院宝庫の北倉に収納され、やがて正倉院宝物を形作る核となりました。今年は正倉院宝物成立にとっても記念すべき年であると言うことができます。
今年の正倉院展の宝物は、聖武天皇の業績を物語る品や遺愛品が多く含まれる点に特徴があります。聖武天皇が国分寺、国分尼寺を建立したことはよく知られていますが、その関連品として続修正倉院古文書(ぞくしゅうしょうそういんこもんじょ)第一巻、勅書銅板(ちょくしょどうばん)、金光明最勝王経帙(こんこうみょうさいしょうおうきょうのちつ)が出陳され、総国分寺である東大寺の前身寺院に関する記録として続々修正倉院古文書(ぞくぞくしゅうしょうそういんこもんじょ)第二十四帙第五巻が展示されます。また、聖武天皇の遺愛品として、七条刺納樹皮色袈裟(しちじょうしのうじゅひしょくのけさ)をはじめ、鳥毛篆書屏風(とりげてんしょのびょうぶ)、紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)、長斑錦御軾(ちょうはんきんのおんしょく)などが出陳されますが、光明皇后が宝物を献納したときの目録である東大寺献物帳(とうだいじけんもつちょう)のうち高名な「国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)」が出陳されることは、特に注目されます。また先述の七条刺納樹皮色袈裟(しちじょうしのうじゅひしょくのけさ)も「国家珍宝帳」の筆頭におかれる宝物として とりわけ大切にされてきたことがわかります。なお、正倉院宝物には聖武天皇の遺愛品以外に、大仏開眼会(かいげんえ)の折に皇族や貴族たちが献納した品々が数多く見られますが、今回は聖武天皇の夫人であった橘夫人(たちばなぶにん)が献納した犀角把白銀葛形鞘珠玉荘刀子(さいかくのつかしろがねかずらがたのさやしゅぎょくかざりのとうす)のほか、おそらく開眼会に際し献納されたと考えられる緑瑠璃十二曲長坏(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)が展示されます。
ところで、正倉院宝物は奈良時代から平安時代初期にかけしばしば出庫と入庫がありましたが、中でも天平宝字八年(764)に勃発した恵美押勝(えみのおしかつ)[藤原仲麻呂(ふじわらのなかまろ)]の乱に際し、武器武具が大量に用いられたことがもっとも大きな出庫であったと考えられます。今回は馬具や武器が8件展示されますが、そのうち漆葛胡禄(うるしかずらのころく)は押勝の乱のため一旦出庫され、失われることなく再入庫された品と考えられています。今回の正倉院展は正倉院宝物の成立と宝物のたどった歴史を観覧することができる構成となっています。
聖武天皇が生涯もっとも力を注いだ事業は、東大寺の建立と大仏の造立でした。今回の正倉院展には東大寺で用いられた仏教工芸品の優品が展示されます。籠箱(こばこ)、蘇芳地六角几(すおうじのろっかくき)などの献物箱・献物几(けんもつき)をはじめ、白石火舎(はくせきのかしゃ)、黄銅柄香炉(おうどうのえごうろ)、黄銅合子(おうどうのごうす)、金銅水瓶(こんどうのすいびょう)、磁皿(じざら)、磁鉢(じはち)などの供養具(くようぐ)、僧侶が用いた玳瑁如意(たいまいのにょい)、法会を荘厳(しょうごん)した孔雀文刺繍幡(くじゃくもんししゅうのばん)、幡脚端飾(ばんのきゃくたんかざり)などのほか、法会の楽舞で用いられた楽器や楽人の装束(しょうぞく)が出陳されます。
このほか、正倉院鏡では唯一の銀貼鏡(ぎんばりきょう)である金銀山水八卦背八角鏡(きんぎんさんすいはっけはいのはっかくきょう)とその鏡箱である八角高麗錦箱(はっかくこまにしきのはこ)、最近新羅経(しらぎきょう)説が唱えられた大方広仏華厳経(だいほうこうぶつけごんぎょう)巻七十二~八十が出陳されることも注目されます。また、近年宮内庁正倉院事務所で行われた皮革調査の成果を反映し、皮革製品が多く展示されている点にも特徴があります。



会 期
平成18年(2006)10月24日(火)~11月12日(日)全20日
会期中無休
会 場
奈良国立博物館 東・西新館
開館時間
午前9時~午後6時
※金曜日(10月27日、11月3日、10日)は午後7時まで
入館は閉館30分前まで
観覧料金
当日 | 前売/団体 | |
一般 | 1000 円 | 900 円 |
高校・大学生 | 700 円 | 600 円 |
中学生以下 | 400 円 | 300 円 |
- 団体は責任者が引率する20名以上。
- 障害者手帳をお持ちの方(介護者1人を含む)は無料。
- 前売券は、近鉄・JR西日本の主要駅、電子チケットぴあ・ファミリーマート・サークルK・サンクス(以上、Pコード:686-897)、ローソンチケット(Lコード:54900)、JTB、ジェイアール東海ツアーズ、日本旅行、及びイープラス[9月22日~11月12日]、当館[9月22日~10月22日]にて発売。
- この観覧料金にて平常展もご覧になれます。
展示宝物
68件(北倉13件、中倉26件、南倉26件、聖語蔵3件)
うち初出陳13件
公開講座
終了いたしました
平成18年(2006)10月28日(土)「聖武天皇に見る仏教政治思想」
東大寺別当・華厳宗管長 森本 公誠
平成18年(2006)11月4日(土)「正倉院と奈良朝絵画」
当館学芸課長 梶谷 亮治
平成18年(2006)11月11日(土)「宝物の献納について」
宮内庁正倉院事務所長 北 啓太
- 各回とも当館講堂において、13時30分から(開場は13時)。
- 聴講無料、定員200名。
主 催
奈良国立博物館
協 賛
NTT西日本、近畿日本鉄道、JR東海、ダイキン工業、大和ハウスグループ、帝塚山学園・帝塚山大学、日本生命
協 力
読売新聞社、NHK奈良放送局、奈良テレビ放送