特別展・特別陳列
特別展
北村昭斎
―漆の技―
奈良在住の漆芸作家、北村昭斎(きたむらしょうさい/1938~)氏は「螺鈿(らでん)」の重要無形文化財保持者、いわゆる人間国宝と、「漆工品修理」の選定保存技術保持者の二つの認定を受けて、創作のほか、文化財の修復、復元模造の制作と、多面的な活動を精力的に続けています。
昭斎氏は奈良の地で漆を家業とする北村家に生まれ、祖父久齋(きゅうさい)、父大通(だいつう)に続く漆芸作家として活躍されています。
漆工品の修理では父大通氏(「漆工品修理」選定保存技術保持者、第1回認定 1976)のあとを受けて当館修理室で三十年あまり文化財の保存修理を行ってきました。文化庁から選定保存技術保持者の認定を受けたのは平成6年(1994)です。国宝蒔絵箏(まきえのそう/大通・昭斎施工)を始めとする春日大社の古神宝(こしんぽう)などの修理は昭斎氏の作家活動にも大きな影響を与えています。
また国宝・重要文化財などの復元模造についても、文化財修理の経験を踏まえ、さらにエックス線撮影等による技法研究も進めながら、意欲的に制作されています。主な復元模造品は、蒔絵箏(奈良・春日大社)、秋野鹿蒔絵手箱(あきのしかまきえてばこ/島根・出雲大社)、銀平脱合子(ぎんへいだつのごうす/奈良・正倉院)、沃懸地籬菊蒔絵螺鈿手箱(いかけじまがきにきくまきえらでんてばこ/神奈川・鶴岡八幡宮)などがあります。
これらの蓄積と実践が、北村昭斎氏の作家活動のなかに反映され、かつ現代的感性によるその継承に成果をあげています。昭斎氏は玳瑁(たいまい)(べっ甲)や厚貝(あつがい)の素材を活かした螺鈿や、洗練された蒔絵技法によって制作するのが特色であり、作品のもつ品格の高さは一貫したものがあります。
これらは正倉院宝物をはじめ、特に中世以前の、多種類にわたる工芸品(漆工品、金工品、陶磁器、能狂言衣装などを含む)のデザインや伝統技法からヒントを得て、新鮮で卓越した感覚によって制作されています。このような作家活動や文化財修理の実践などによって、平成10年(1998)紫綬褒章を受章され、翌年(1999)、いわゆる人間国宝の認定を受けました。
その後も昭斎氏は精力的に作家活動を行っており(社団法人日本工芸会参与)、認定前後の頃から、器物の木胎部(もくたいぶ)を自身の手で作り、その形に合った加飾を伝統的な漆芸技法で制作する、という新境地を開いています。
以上にみてきた北村昭斎氏の仕事(創作、修理、模造)の全貌を、代表的な作品を集めて、その基盤を築いてきた祖父久齋・父大通の作品とともに、展覧いたします。
このような北村昭斎氏の多彩な漆芸活動は、日本文化を世界に発信する現代的意義も併せ持つともいえ、また昭斎氏の生まれ住んだ奈良の地で実践されることの重要性についても紹介したいと思います。

(個人)

(神奈川・鶴岡八幡宮)
会 期
平成18年(2006)9月2日(土)~10月1日(日)
会 場
奈良国立博物館 東新館
休館日
毎週月曜日
※ ただし、9月18日(敬老の日)は開館し、9月19日に休館します。
開館時間
9:30~17:00 毎週金曜日は19:00まで開館]
※入館は閉館の30分前まで
観覧料金
当日 | 前売/団体 | |
一般 | 700 円 | 600 円 |
高校・大学生 | 400 円 | 300 円 |
中学生以下 | 無料 | 無料 |
- 団体は責任者が引率する20名以上。
- 障害者手帳をお持ちの方(介護者1人を含む)は無料。
- 前売券は、近鉄の主要駅・ローソンチケット(Lコード:54162)・電子チケットぴあ・ファミリーマート・サークルKサンクス(Pコード:686-855)・JTB、ジェイアール東海ツアーズにて8月1日より取り扱います。
- この観覧料金にて平常展もご覧になれます。
出陳品
出陳件数:96件(うち国宝1件、重要文化財6件)
特別展記念企画
終了いたしました
平成18年(2006)9月9日(土) 鼎談(ていだん)「北村昭斎の全仕事」
北村 昭斎氏
元宮内庁正倉院事務所保存課長 木村 法光氏
当館上席研究員 鈴木喜博氏
※午後1時30分より3時まで。(午後1時より講堂入口で整理券を配布します)
当館講堂にて。聴講無料。
サンデートーク
終了いたしました
平成18年(2006)9月 17日(日) 「北村昭斎:漆芸の魅力」
金沢美術工芸大学大学院教授 柳橋 眞氏
※午後2時より3時まで(開場午後1時)。当館講堂にて。聴講無料。
主 催
奈良国立博物館、朝日新聞社
後 援
社団法人日本工芸会
協 力
日本航空、奈良テレビ放送