特別展・特別陳列
御遠忌800年記念 特別展
大勧進 重源
―東大寺の鎌倉復興と新たな美の創出―
治承(じしょう)4年(1180)、平氏の南都(なんと)焼き打ちにより、東大寺・興福寺は甚大な被害を蒙(こうむ)りました。東大寺においては、大仏殿が焼け落ち、本尊盧舎那大仏(るしゃなだいぶつ)が大破したのをはじめ、堂塔伽藍(どうとうがらん)の多くが、内部に安置されていた幾多の尊像とともに灰燼に帰しました。しかし、平氏の没落と源頼 朝の覇権確立を背景に、後白河法皇をはじめ、朝野をあげて復興に取り組んだ結果、建仁(けんにん)3年(1203)には東大寺総供養が行われるにいたりました。
この間、東大寺再建の大勧進(だいかんじん)として諸堂・諸仏の再興に尽力したのが、中国・宋を三度にわたって巡礼した経験をもち、当時すでに六十歳を超えていた俊乗房重源(しゅんじょうぼうちょうげん)その人です。重源の指導のもと、大仏の再鋳(さいちゅう)や大仏殿の再建、仏堂内の諸仏の造立が次々と実現してゆきますが、その過程で、仏像の世界では巨匠運慶(うんけい)・快慶(かいけい)ら慶派仏師(けいはぶっし)によって写実性と躍動感に富んだ鎌倉彫刻が成立し、また建築の分野では大仏様(だいぶつよう)と呼ばれる新しい様式が開花しました。この鎌倉新様式は、奈良~平安前期の古典的美術と、新しく渡来した宋様式の研究・消化によって確立したと考えられますが、重源がその成立に大きく関与したことは疑いありません。
また重源は、東大寺再興のための拠点として、周防(すおう)・播磨(はりま)・伊賀(いが)・摂津(せっつ)等に別所(べっしょ)を設け、ここにも重源独自の思想にのっとった形式の仏像や舎利(しゃり)関係の工芸品などが納められました。若くして醍醐寺に、つづいて高野山に入り、真言僧として歩んだ重源の思想の根本には、真言密教の土台の上に築かれた阿弥陀・舎利信仰があったと考えられますが、天平の昔、大仏鋳造に献身的に協力した高僧行基(ぎょうき)の存在も大きな影を落としていたはずです。
平成18年(2006)は重源没後800年の節目の年です。これを記念して、重源の肖像や重源が生み出した各種の美術作品、その生涯や思想に関する様々な史料を一堂に会し、その文化史上の巨大な足跡を振り返ります。

(奈良・東大寺)

(奈良・東大寺)
会 期
平成18年(2006)4月15日(土)~5月28日(日)
会 場
奈良国立博物館 東・西新館
休館日
毎週月曜日
※ ただし、5月1日(月)は開館
開館時間
9:30~17:00 [毎週金曜日は19:00まで開館]
※入館は閉館の30分前まで
観覧料金
当日 | 前売り・団体 | |
一般 | 1000 円 | 900 円 |
高校・大学生 | 700 円 | 600 円 |
中学生以下 | 無料 | 無料 |
- 団体は責任者が引率する20名以上。
- 障害者手帳をお持ちの方(介護者1人を含む)は無料。
- 前売券は、近鉄ステーションサービス、近鉄の主要駅、ローソンチケット(Lコード:56616)、電子チケットぴあ・ファミリーマート・サンクス・セブンイレブン(Pコード:686-508)、JTB、ジェイアール東海ツアーズにて3月16日より取り扱います。
- この観覧料金にて本館平常展もご覧になれます。
出陳品
出陳件数:135件(うち国宝10件、重要文化財63件)
公開講座
終了いたしました
平成18年(2006)4月22日(土)「重源の五台山文殊信仰と作善 ―東大寺復興をめぐって―」
当館研究員 谷口 耕生
平成18年(2006)5月 6日(土)「東大寺領荘園と別所の経営」
当館研究員 野尻 忠
平成18年(2006)5月13日(土)「重源の舎利信仰と美術 ―三角五輪塔を問い直す―」
当館工芸考古室長 内藤 栄
平成18年(2006)5月20日(土)「重源の生涯とその事績 ―仏像を中心に―」
当館美術室長 岩田 茂樹
※各回とも開講は午後1時30分。(午後1時より講堂入口で整理券を配布します)
当館講堂にて。聴講無料。定員200名。
ギャラリートーク
終了いたしました
平成18年(2006)5月 10日(水)「重源と宋時代の美術」
当館研究員 北澤 菜月
※午後2時から。当館講堂にて。入館者の聴講自由。
主 催
奈良国立博物館、東大寺、朝日新聞社
協 力
日本航空、奈良テレビ放送、財団法人仏教美術協会、奈良交通株式会社