特別展・特別陳列
特別展
女性と仏教
いのりとほほえみ
仏教がわが国に伝来したのは6世紀のことで、最初の出家者は女性(善信尼)でした。善信尼は百済に渡ってさらに仏教を学び、飛鳥時代の仏教興隆に貢献しました。聖徳太子の周辺にも熱心な女性信者の姿がありました。そののちも、わが国における仏教発展の大きな原動力になった女性は多く、持統天皇・橘夫人・光明皇后・称徳天皇・檀林皇后といった人々によって、造寺・造仏・写経などが積極的におこなわれることにより、仏教はさかんになり、信仰も深まっていきました。
平安時代になると、女性は成仏できないとも言われるようになりますが、それさえも発心の機縁として、法華経信仰や浄土信仰の高まりのなかで、女性によって美しい装飾経が制作され、仏像や仏画の制作の背景にも女性の存在を知ることができます。またさまざまな霊験記や往生伝の主人公にも女性が少なくありません。
鎌倉時代には、法然や日蓮などの祖師によって新しい仏教が誕生しますが、その周囲にも多くの女性の姿がありました。日蓮が女性に宛てた手紙からは、困難な状況のなかで日蓮を力強く支えた女性の存在を知ることができます。またこの時代には、明恵・叡尊らによって尼寺が創建あるいは復興される動きが見られ、尼自身の活動にも特筆すべきものがあります。明恵の善妙寺創建、叡尊の法華寺復興、信如の中宮寺復興、無外如大の景愛寺創建などは、鎌倉時代の仏教を考えるうえできわめて重要な出来事であると言えます。また鏡や櫛を納入した仏像・髪を使用した繍仏・尼寺に伝わる染織品など、女性特有とも言える細やかな信仰の遺品も残されています。
この展覧会は、女性の多様な信仰の様相と、わが国の仏教の展開に女性が果たした大きな役割を、
Ⅰ 仏教の受容と女性 Ⅱ 宮廷の女性と仏教 Ⅲ 浄土憧憬 Ⅳ 信仰と霊験 Ⅴ 法華経の信仰と女性 Ⅵ 母と子のイメージ Ⅶ 鎌倉仏教と女性
Ⅷ 表わされた女性信者の姿 Ⅸ 女性の信仰の種々相
という九つのテーマのもとに大観します。仏教が女性をどう見たかではなく、女性が仏教をどう見たか、という視点にできるかぎり立ち、多数の国宝・重要文化財を含む名品の数々を通して、女性と仏教の関わりをみつめていきます。

(奈良・中宮寺)

(奈良国立博物館)
会 期
平成15年(2003)4月15日(火)~5月25日(日)
休館日
4月21日(月)、5月6日(火)、5月12日(月)、5月19日(月)
開館時間
9時30分~17時 (入館は閉館30分前まで)
ただし毎金曜日は19時まで。(入館は閉館30分前まで)
観覧料金
一般 | 830 円 (560 円) |
高校・大学生 | 450 円 (250 円) |
中学生以下 | 250 円 (130 円) |
- ( )内は20名以上の団体料金
- 5月5日(月)は小・中生は無料。(大人、高校・大学生は同時開催の平常展のみ無料)
出陳品
主 催
奈良国立博物館・産経新聞社