特別展・特別陳列
特別展
仏舎利と宝珠
―釈迦を慕う心―
舎利(しゃり)は仏教の開祖、釈迦(しゃか)(ゴータマ・シッダルタ)の遺骨のことで、舎利は釈迦をしのぶよすがとして篤く信仰されました。舎利を美しく飾った容器に納入することは既に古代インドでおこなわれていましたが、その伝統は、中国、韓国・日本に受け継がれ、数多くの優れた作品が生み出されました。本展は、舎利荘厳美術の至宝を一堂に集め、華麗に展開した舎利信仰の様々な姿をご覧頂くものです。釈迦への想いが結晶した美の世界をご鑑賞ください。
釈迦は、インドのクシナガラで80年におよぶ偉大な生涯を閉じました。弟子たちは亡きがらを荼毘(だび)にふし、舎利(遺骨)を釈迦をしのぶよすがとして礼拝しました。舎利は美しく飾られた容器に納められ、ストゥーパ(塔)に埋納されました。舎利への信仰は仏教のさまざまな信仰のなかでも、もっとも古いもののひとつです。
仏教の伝播にともない、舎利信仰は中国、韓国、日本へと伝わりました。インドの伝統にのっとり、日本でも古代寺院では塔に舎利が安置されましたが、平安時代のはじめに密教が伝えられ、舎利信仰に大きな転機が訪れました。修法(加持祈祷の法)の本尊に舎利をむかえ、国家安泰(こっかあんたい)、玉体安穏(ぎょくたいあんのん)、五穀豊穣(ごこくほうじょう)などが祈願されました。舎利は人々に現世利益をもたらす霊験の強い存在と認識されるようになったのです。
やがて、舎利はあらゆる願いをかなえる不思議な玉、如意宝珠(にょいほうじゅ)(摩尼宝珠(まにほうじゅ)、宝珠ともいう)と見なされるようになりました。舎利の霊験の強さが如意宝珠と同体であるという発想を生んだのでしょう。宝珠は如意輪観音が手に持っていたり、愛染明王像の宝瓶座(ほうびょうざ)の中につまっているなど、様々なホトケと密接な関連を有しています。宝珠との結びつきにより、舎利はこのようなホトケたちとも関連を深め、日本の舎利信仰は独自の展開を見せるようになりました。複雑な信仰を反映して、日本の舎利容器は宝塔形、五輪塔形、宝珠形などいくつもの形式が現れました。
この特別展は新資料をまじえつつ、舎利荘厳の名品が一堂に集まるものです。海外からの出陳作品には、松林寺磚塔納置舎利容器(韓国・国立慶州博物館)、慶州羅原里五層石塔出土舎利容器(韓国・国立中央博物館)など、わが国で初めて公開される作品があります。釈迦を慕う心が生み出した美の世界をご鑑賞下さい。

韓国宝物
松林寺五層磚塔納置金銅舎利容器
(韓国・国立慶州博物館)
会 期
平成13年(2001)7月14日(土)~9月2日(日)
会 場
奈良国立博物館 東・西新館
休館日
毎週月曜日
開館時間
午前9時30分~午後5時(入館は午後4時30分まで)
金曜日、および8月15日(水)は午後7時まで
(入館は午後6時30分まで)
観覧料金
一般 | 830 円(560 円) |
高校・大学生 | 450 円(250 円) |
小・中学生 | 250 円(130 円) |
- ※( )内は20名以上の団体料金
- 毎週土曜日は小中学生無料
出陳品
公開講座
終了いたしました
平成13年(2001)7月21日(土) 統一新羅の舎利容器の発展と特徴
崔 応天氏 韓国・国立中央博物館学芸研究官
平成13年(2001)7月28日(土) ガンダーラの聖遺物信仰-舎利を中心として-
桑山正進氏 京都大学人文科学研究所長
平成13年(2001)8月4日(土) 舎利をこめた密教法具について
阪田宗彦氏 大谷女子大学教授
平成13年(2001)8月25日(土) 仏舎利と宝珠を取り巻く人々とパワー
ブライアン・D・ルパート氏 米国・イリノイ大学助教授
平成13年(2001)9月1日(土) 仏舎利から宝珠へ-密教における舎利信仰-
内藤 榮 当館工芸室長
- いずれも午後1時30分より3時まで。
- 当館講堂にて。
- 聴講は無料。定員200名。
作品解説
終了いたしました
平成13年(2001)7月25日(水)飛鳥時代の舎利容器
井口 喜晴 当館仏教美術資料研究センター長
平成13年(2001)8月1日(水)舎利信仰の革命-御七日御修法-
内藤 榮 当館工芸室長
平成13年(2001)8月8日(水)舎利信仰と絵画
梶谷 亮治 当館学芸課長
平成13年(2001)8月22日(水)仏塔と舎利―インド・中国の場合-
稲本 泰生 当館研究員
平成13年(2001)8月29日(水)神道美術と宝珠
伊東 哲夫 当館研究員
- いずれも午後2時より当館講堂にて。
- 聴講は無料。
主 催
奈良国立博物館、読売新聞大阪本社
協 賛
帝塚山大学
協 力
日本航空