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第72回 正倉院展 

 正倉院は奈良時代に建立された東大寺の倉庫で、聖武天皇の遺愛品を中心に約9,000件の宝物が現在まで伝えられています。正倉院展はその中から60件ほどを選び公開する展覧会です。今年は、楽器、伎楽面(ぎがくめん)、遊戯具(ゆうぎぐ)、調度品、佩飾品(はいしょくひん)、染織品、文書・経巻などが出陳され、正倉院宝物の主要なジャンルの名品をご覧いただくことができます。とりわけ、犀(さい)や獅子を螺鈿(らでん)で表した平螺鈿背円鏡(へいらでんはいのえんきょう)、曲芸をする人々などを緻密に描いた墨絵弾弓(すみえのだんきゅう)、花文様を全面に表した花氈(かせん)など、美術としての魅力を有する品も数多く展示されます。また、武器・武具と薬物がまとまって出陳されるのも特徴です。武器・武具としては大刀(たち)、胡禄(ころく)と弓箭(ゆみや)、鉾(ほこ)のほか、馬具も出陳され、古代における武人の装いをご覧いただくことができます。薬物は光明皇后が病人に分け与えるために東大寺に献納したものを中心に、6件が出陳されます。光明皇后は今日の病院に当たる施設を作るなど救済事業に尽力しましたが、薬物の献納もその一環と言えるでしょう。薬物は奈良時代における疫病との闘いを伝える品としても、注目されています。

紫檀槽琵琶

南倉 紫檀槽琵琶

          
会 期 令和2年10月24日(土)~11月9日(月)
会 場 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日 会期中無休
開館時間

午前9時~午後6時

※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(11月3日)は午後8時まで

※入館は閉館の60分前まで

注意事項 セキュリティ対策強化及び混雑緩和のため、45cm×35cm×20cmよりも大きな荷物は持ち込みを制限します。ご来場前に他所でお預けいただくか、博物館に設置される無料のコインロッカー・手荷物預かり所(運営時間午前8時~午後6時、開館延長日は午後8時まで)をご利用ください。
また、基準以下のお荷物も積極的にコインロッカー等にお預けいただき、身軽に正倉院展をお楽しみください。
なお、お客様の安全のため、キャリーバッグは大きさに関わらず持ち込み禁止とさせていただきますので、ご協力をお願いいたします。
混雑した展示室内では他のお客様の視界を遮る可能性があるため、帽子は脱いでいただきますようお願いいたします。
館内ではマスクの着用をお願いいたします。
観覧料金
観覧には「前売日時指定券」の予約・発券が必要ですが、既に完売しました。
当日券の販売はありません。

観覧料金 (前売日時指定券) 
  通常券(一般) 2,000円
 通常券(中・高・大) 1,500円
 割引券(一般) 1,900円
 割引券(中・高・大) 1,400円
 キャンパスメンバーズ券 教職員 1,900円
 キャンパスメンバーズ券 学生 400円
 無料観覧券 障害者1名 無料
※無料観覧券の
予約・発券が必要
 無料観覧券 障害者1名+介護者1名
 無料観覧券 小学生他
  •  

  • ※通常券(中・高・大)を予約・発券された方は、観覧当日に学生証などの提示が必要です。ご提示いただけない場合には、通常券料金(一般2,000円)との差額をお支払いいただきます。

    ※割引券・キャンパスメンバーズ券・無料観覧券を予約・発券された方は、観覧当日に証明書・会員証などの提示が必要です(小学生を除く)。ご提示いただけない場合には、通常券料金(一般2,000円、中・高・大1,500円)との差額をお支払いいただきます。

    ※割引対象は以下の通りです。

     ミュージアムぐるっとパス・関西2020、奈良トライアングルミュージアムズ、KINTETSU RAIL PASS (Plus/1day/2day)、国立博物館メンバーズパス、各種メンバーズプレミアムパス(東京国立博物館、九州国立博物館)、各種友の会(東博、九博、京都国立近代美術館、国立国際美術館、国立民族学博物館、MIHO MUSEUM)、奈良博プレミアムカード(3回目以降の観覧)

    ※障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)・小学生・奈良博プレミアムカード会員(1回目及び2回目の観覧)・各種協会〔国際博物館会議(ICOM)、日本博物館協会、美術評論家連盟(AICA)〕会員は無料ですが、無料観覧券の予約・発券が必要です。なお、未就学児の場合には無料観覧券の予約・発券は不要です。

    前売日時指定券では、名品展(なら仏像館・青銅器館)を観覧することはできません。ただし同券をお持ちの方は、名品展(なら仏像館・青銅器館)を割引料金〔一般200円(通常700円)、大学生100円(通常350円)〕で観覧することができます。なお、高校生以下及び18歳未満の方・70歳以上の方・障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。

入館時間区分

入館時間(開館時間から原則1時間毎)の指定が必要です。

※最終入館時間は午後5時、金・土・日曜日、祝日は午後7時です。

入館・観覧に関して

※指定された日時以外の入館はできません。

入館待ち列にお並びいただけるのは、指定された時間の30分前からです。それ以前に来館されても、列にお並びいただくことはできません。

※指定された時間内であっても、展示会場内の混雑回避のため、入館までにお待ちいただく可能性がございます。

※入館前に検温を実施いたします。また、マスクの着用をお願いいたします。

※本展は入替制ではありませんが、展示会場内の混雑を避けるため、1時間程度を目処に鑑賞をお願いいたします。

詳細 入館・観覧に関して、詳しくはこちらへ。

出陳品 59件(北倉17件、中倉23件、南倉16件、聖語蔵3件)
うち4件は初出陳
詳細 出陳品一覧はこちらへ
ボランティア解説 本年は、例年行っている当館講堂でのボランティアによる解説は実施しません。
公開講座

公開講座の聴講には事前の申し込みが必要です。「講座・催し物」内の申込み画面より必要事項を入力の上、お申込みください。詳しくは、こちらへ。

1031日(土)

「正倉院の石薬とその素材」 鶴 真美氏(宮内庁正倉院事務所保存課保存科学室員)

117日(土)

「武器・武具の献納と薬物の献納について」 内藤 栄(奈良国立博物館学芸部長)

【時間】各回とも午後130分~3時(午後1時開場)

【会場】当館講堂

【定員】各回とも90名(事前申込先着順)

【申込方法】奈良国立博物館ホームページ「講座・催し物」内の申込み画面より必要事項を入力の上、お申込みください(web申込のみとなります)。

【受付期間】105日(月)~各講座開催前日まで。

※聴講無料(展覧会観覧券等の提示は不要です)。

※聴講には事前申込が必要です(当日申込でのご参加はできません)。

※入場の際には、受付完了メール画面をご提示ください。

※応募は各回お1人様1回でお願いいたします。

※定員に達し次第締め切りとさせていただきます。

音声ガイド

2種類のツアーをご用意しています。

①通常ガイド(日本語版/ENGLISH)

  宝物のより詳しい解説がお聞きいただけます。
【音楽♪】正倉院文書に伝わる最古の琵琶の楽譜や伎楽の調べを特別収録。

②東大寺博士のなぜ・なにガイド(日本語版のみ)

  キャラクターの楽しい掛け合いでご案内します。初心者の方にもおすすめです。

貸出料金:各ツアー お一人様1台560円(税込)
収録時間:約30分

音声ガイドに関するお問い合わせ:(株)アコースティガイド・ジャパン
                 info@acoustiguide.co.jp、03-5771-4083

託児室 本年は、例年行っている託児室の開設は実施しません。
よくある質問

正倉院展について「よくある質問」をまとめましたので、ご参考にしてください。

詳細 詳しくはこちらへ。

主催 奈良国立博物館
協賛

岩谷産業、NTT西日本、関西電気保安協会、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、

シオノギヘルスケア、ダイキン工業、大和ハウス工業、中西金属工業、丸一鋼管、大和農園

特別協力 読売新聞社
協力 NHK奈良放送局、奈良テレビ放送、日本香堂、仏教美術協会、読売テレビ
チラシ

チラシ(PDF,2.8MB)

動画

【公式】ならはくチャンネル(https://youtube.com/c/narahakuPR

読売新聞オンライン正倉院展特設サイト(https://www.yomiuri.co.jp/shosoin

グッズ

奈良国立博物館ミュージアムショップ(http://www.narahaku-shop.com/

読売新聞社特設サイト(https://mg-ex.net/



主な出陳品

※単位は、寸法=センチメートル、重量=グラム
※画像をクリックすると、より大きな画像が表示されます。

           
御甲残欠

北倉40 御甲残欠 [おんよろいのざんけつ]
(よろいの残欠) 一括
札長7.2 幅0.9~1.2 他
前回出陳年=昭和61年(1986)

 正倉院には数多くの武器や武具が伝わる。本品は奈良時代の甲冑(かっちゅう)の一形式である挂甲(けいこう)の残片で、甲(よろい)を形成していた小札(こざね)と呼ばれる小さな鉄製の板約1900枚が伝わったもの。『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』には、大仏への献納品として100領の甲が記載されているが、そのうち挂甲1領は早くに宝庫から出され、残りはすべて天平宝字8年(764)の藤原仲麻呂(恵美押勝)の乱に際して出蔵されて宝庫に戻らなかった。そのため、本品が『国家珍宝帳』記載の挂甲に該当するものかどうかは不明である。
 小札はいずれも頭が剣先形で、他端に向かってわずかに幅を減じる。小札どうしを綴じ連ねる紐を通すための小孔があけられており、一部に鹿革製の紐と白や紫の組紐が残っている。古代の甲(よろい)の実態をうかがわせる貴重な品。

五色龍歯

北倉70 五色龍歯 [ごしきりゅうし]
(くすり)  1箇
歯面の長さ16.7 重4655
前回出陳年=平成22年(2010)

 聖武天皇の四十九日に当たる天平勝宝8歳(756)6月21日、お后の光明皇后は聖武天皇の遺愛品とともに、薬物60種を大仏に献納した。献物帳の『種々薬帳(しゅじゅやくちょう)』には、堂内に安置して仏を供養するために献納するが、もし病に苦しむ人々がいれば薬を分け与えて良いとし、また彼らが亡くなった場合には花蔵世界(けぞうせかい)(盧舎那仏(るしゃなぶつ)=大仏の世界)に生まれ変わるよう願っている。光明皇后は以前より悲田院(ひでんいん)や施薬院(せやくいん)を創設するなど病人や孤児の救済に尽くしていたが、薬物の献納はその活動の一環に位置付けることができる。
 五色龍歯はこの時献納された薬物の一つ。「龍歯」と呼ばれるが、実際には象の歯の化石である。漢方薬として用いられ、鎮静などの薬効があるとされる。

花氈

北倉150 花氈 [かせん]
(フェルトの敷物)  1床
長245 幅123 重2747
前回出陳年=昭和52年(1977)

 花氈は文様(もんよう)を表したフェルトの敷物で、羊毛に湿気や熱を加えながら圧力をかけ、繊維を縮絨(しゅくじゅう)させてつくられる。従来、フェルトの文様表現については、ベース(地氈(じせん))に文様のパーツとなる羊毛材料を嵌(は)め込(こ)む手順が想定されていた。しかし、近時の調査で、文様のパーツを配置した上からベースの羊毛をのせ、縮絨させる方法によりつくられたことがわかり、中央アジアなどに残る伝統的技法と共通していることが指摘されている。
 本品は一対の大きな円形の花文(かもん)を表し、四隅に草花文、長辺の中央に草花と山岳文を配したもの。文様パーツとしては、主にプレフェルト(羊毛が少し絡んだ状態のシート状のもの)が使われており、科学調査で、褐色部分には蘇芳(すおう)、青色部分には藍(あい)の使用が確認された。裏面に「東大寺」印があり、同寺の用具であったことが知られる。

粉地彩絵箱

粉地彩絵箱 蓋表

蓋表

中倉157 粉地彩絵箱 [ふんじさいえのはこ]
(献物を入れた箱)  1合
縦22.4 横28.4 高9.2
前回出陳年=平成21年(2009)

 仏への献物を納めた箱。宝庫には同様の用途と考えられる箱が40合ほど伝わっているが、美しく装飾され、底部に脚(きゃく)を設けている品が多い。本品はヒノキ製で、外面と内面に彩絵を施している。外面は地に淡紅色を塗り、白・黄・橙・赤・緑・紫・黒などを用いて草花文を描いている。とりわけ蓋の上面は文様構成が豊かで、五弁のやや大きな花を中心に、四辺の中央と四隅に五弁花をつけた草花文を整然と配置している。脚は暗い緑系と赤褐色で彩られ、箱本体と印象を変えている。30年ほど前に行われた科学調査によって、本品の淡緑色の顔料より塩化物系鉛化合物(えんかぶつけいなまりかごうぶつ)が検出された。この物質はわが国で用いられた白色顔料に含まれることが指摘されており、これより本品は国産品である可能性が高いことがわかる。

紫皮裁文珠玉飾刺繡羅帯残欠

中倉95 紫皮裁文珠玉飾刺繡羅帯残欠
[むらさきがわさいもんしゅぎょくかざりししゅうらのおびざんけつ]
(珠や刺繡で飾った帯)  4片
最大のもの 長85.0 幅7
前回出陳年=平成20年(2008)

 宝庫に伝わる帯の中でも、もっとも華麗な品。現在は4片に分かれているが、合わせると約230センチメートルの長さになる。帯の芯には白の絁(あしぎぬ)を用い、それを茶褐色の絁と羅で包み、刺繡で装飾している。刺繡には撚(よ)りのない絹糸が用いられ、珠を連ねた格子文と小花文を表している。格子文の珠は、深緑・緑・黄・白などの色が移り変わるように並べられ、暈繝文様(うんげんもんよう)とされている。帯の縁は紫の組紐で縁取り、さらに真珠・ガラス・水晶などの珠玉を連ねた垂飾(すいしょく)を飾っている。垂飾は格子文とつながるように配されている。帯の先端や途中に、紫色に染めた鹿革製の飾りを縫(ぬ)い付けている。
 芯の絁には因幡国(いなばのくに)の国印と墨書が確認でき、因幡国(現在の鳥取県東部)より税として納められた絁を用いたことがわかる。

烏犀把漆鞘樺纒黄金珠玉荘刀子

中倉131 烏犀把漆鞘樺纒黄金珠玉荘刀子
[うさいのつかうるしのさやかばまきおうごんしゅぎょくかざりのとうす]
(珠玉かざりの小刀)  1口
全長30.5 把長11.7 鞘長22.7 身長15.8 茎長7.1
前回出陳年=平成11年(1999)

 刀子は携帯用の小刀で、紙を切ったり木を削ったりする実用の文房具として、また腰から下げて身を飾る佩飾品(はいしょくひん)として使用された。正倉院には、聖武天皇の遺愛の刀子や、貴人が東大寺に献納したと見られる刀子があわせて67口伝わっている。本品はその中でも特に大型に属する品で、拵(こしら)え(外装)の装飾に意を凝らしたつくりが注目される。把(つか)には黒みを帯びた犀角(さいかく)(烏犀角(うさいかく))が用いられ、鞘は黒漆地の上から5箇所に樺纒(かばまき)を施し、その間隙(かんげき)に青色のガラス玉と赤の伏彩色(ふせざいしき)を施した水晶を交互に嵌め込む。金具は金製で、把頭(つかがしら)と鞘尾(さやじり)の金具には唐草文様が透彫(すかしぼり)されている。全体の黒い色調の中で、珠玉や金具の鮮やかな輝きが映える意匠は、本品に高貴な趣を与えている。刀子造(とうすづくり)で細直刃文(ほそすぐはもん)を焼いた刀身は、刃部が研ぎ減りしたように細身になった特徴的な姿を示している。

  
平螺鈿背円鏡

南倉70 平螺鈿背円鏡
[へいらでんはいのえんきょう]
(螺鈿かざりの鏡)  1面
径39.5 縁厚1.1 重5545
前回出陳年=平成7年(1995)

 鏡背(きょうはい)を螺鈿(らでん)や琥碧(こはく)、玳瑁(たいまい)といった珍奇な素材で装飾した白銅(はくどう)製の鏡。鏡背の文様は、小花文を連珠状に連ねた界線で内区と外区に分かつ構成をとる。内区は鈕(ちゅう)(つまみ)を中心として八方に花文を配し、外区は獅子や犀(さい)を小花文で囲んだモティーフを主文(しゅもん)として、周囲を鳥や唐花の文様でにぎやかに埋めている。また、これらの文様の間隙(かんげき)にはトルコ石の細片がちりばめられ、青や緑の輝きを放つ。正倉院伝来の螺鈿鏡では、鈕を中心として同心円状に文様が配されるものが多いが、本品は上下方向の明確な文様構成をとる珍しい品である。なお、鏡体(きょうたい)についての近年の科学調査でアンチモンを多く含む金属組成であることが確認され、従来指摘されていた唐(とう)製の白銅鏡の組成とはやや異なる部類に属することが明らかになった。

墨絵弾弓

墨絵弾弓 部分

部分

中倉169 墨絵弾弓 [すみえのだんきゅう]
(曲芸や楽人が描かれた遊戯用の弓)  1張
長162.0
前回出陳年=平成19年(2007)

 弾弓は丸玉をはじく弓をいい、武器として発生したが、後に遊戯(ゆうぎ)(ゲーム)用ともなった。宝庫には2張の弾弓が伝わるが、いずれも遊戯用。本品は木製(樹種は不明)で、下から三分の一ほどの位置に握りを設けている。弓身内側の握り以外の部分には、墨で散楽(さんがく)とそれを楽しむ人々の姿を描いている。散楽とは中国の民間芸能で、歌舞のほか幻術、奇術、曲芸などが行われた。わが国にも伝わり、奈良時代には唐散楽と呼ばれた。本品には楽器を演奏する人々、舞人、竿を使った曲芸、童子を肩にのせる大力の芸、弄丸(ろうがん)芸(玉取・お手玉)、見物人などが細かい筆づかいで描かれている。弦はマダケ製で、中ほどに玉をのせる座を設けている。

桑木木画碁局

中倉174 桑木木画碁局 [くわのきもくがのききょく]
(囲碁の盤)  1具
縦52.0 横51.9 高15.5
前回出陳年=平成21年(2009)

 囲碁に使われた盤。盤面は象牙による界線を縦横に19条施し、界線の交点9箇所に象牙・コクタン・金を象嵌してつくった星(井目(せいもく))を配したものであるが、小口切りのクワノキの薄板を一面に貼り並べ、その木目を意匠に採り入れた装飾はとりわけ目を引く。盤面側面は各面とも象牙の界線で区画分けし、中央と両端の区画に紺牙(こんげ)・紅牙撥鏤(こうげばちる)(色染めした象牙に文様を線刻する技法)で、その間の小区画にヤコウガイ毛彫りで、それぞれ草花や虫の優美な文様(もんよう)を表す。またそれぞれの区画は木画(もくが)による幾何学文様(きかがくもんよう)で額縁風に縁取られる。脚(きゃく)の部分にはシタンが用いられ、金泥(きんでい)で木理文(もくりもん)を描き、稜角と脚の刳形(くりがた)面に象牙を施している。正倉院には3基の碁盤が伝わり、木画紫檀碁局(もくがしたんのきょく)(北倉36)がよく知られるが、本品も様々な装飾技法が凝らされた特色ある品といえよう。

紫檀槽琵琶

南倉101 紫檀槽琵琶 [したんのそうのびわ]
(絃楽器) 1面
全長98.5 最大幅41.2
前回出陳年=平成14年(2002)

 四絃で頸(くび)が直角に曲がった器形をもつ琵琶は、古代ペルシアに起源をもつ。正倉院には5面の四絃琵琶が伝わり、多くは槽(そう)(胴の背面)を木画(もくが)や螺鈿(らでん)といった技法でにぎやかに飾るが、本品は槽の装飾がまったくない簡素なつくりを示す。槽や鹿頸(ししくび)はシタン、転手(てんじゅ)はコクタン、海老尾(えびお)や絃門(げんもん)はツゲといった具合に、諸地域に産する様々な材が贅沢に使われている。捍撥(かんばち)(撥受け)には皮革が貼られ、つがいの水鳥と、それに襲いかかる猛禽のいる山水景が描かれる。金箔を一部に用いた装飾的な山水と、羽毛などを細かく描いた写実的な鳥を巧みに同居させた、高度な構成力を示している。朱を地色に用いた珍しい例でもあり、彩絵の上から全面に油を引く油色(ゆしょく)の技法が見られるなど、古代の絵画資料としても注目される品である。

孔雀文刺繡幡

南倉180 孔雀文刺繡幡
[くじゃくもんししゅうのばん]
(刺繡でかざった幡)  1枚
縦81.2 横30.0
前回出陳年=平成18年(2006)

 紫色の綾(あや)を地裂とし、孔雀と草花、花樹を刺繡で表している。刺繡技法は刺(さ)し繡(ぬい)を中心に、鎖繡(くさりぬい)、返(かえ)し繡(ぬい)などが用いられ、糸は撚(よ)りのない絹糸を用いている。刺繡は文様(もんよう)部分にのみ施され、表裏両方から鑑賞できる両面刺繡である。左右の縁は、緑色を等間隔に染めた絁で縁取られている。縦長の形状で、表裏から鑑賞する形式であることから、寺院の法要等において掲げられた幡の一部であると考えられている。宝庫には聖武天皇の一周忌法要に用いられた品をはじめ数多くの幡が伝わる。刺繡装飾の幡も少なくないが、本品はその中でもっとも華麗な品である。
 なお、今回出陳されている花鳥文刺繡幡残片(かちょうもんししゅうのばんざんぺん)(出陳番号40)はもとは本品と一連の品と考えられる。

続修正倉院古文書後集 第十七巻 更可請章疏等目録

中倉17 続修正倉院古文書後集 第十七巻〔更可請章疏等目録〕
[ぞくしゅうしょうそういんこもんじょこうしゅう]
[さらにこうべきしょうしょとうもくろく]
(書物の借用リスト)  1巻
縦30.8
初出陳

 天平20年(748)6月10日に、僧の平摂(へいしょう)が、写経所(しゃきょうしょ)において今後書写するべきものとして選び取った書物のリストである。仏書127部と、仏教以外の書物43部について、その書名と巻数が記される。仏書は経典の注釈書や解説書が中心で、元暁(がんぎょう)など新羅(しらぎ)僧の著作を含むこと等から、新羅での滞在経験を持つ大安寺僧の審祥(しんしょう)(審詳とも。生没年不詳)の旧蔵書と推定されている。仏教以外の書物では、詩文集や史書、兵書、天文書、医書などがみられる。たとえば『新修本草(しんしゅうほんぞう)』は、唐の高宗の顕慶4年(659)に完成した勅撰の本草学(ほんぞうがく)(医療に供する薬物の学問)の書物で、奈良時代前半にはわが国にもたらされており、このように写経所での書写も計画されていたことが知られる。

馬鞍

中倉12 馬鞍 [うまのくら]
(騎馬用の座具)  一具
鞍橋:前輪高25 後輪高24 鞍褥:前後間の長37 韉:長54
屧脊:上部長56 鐙:高17.8 幅15
前回出陳年=平成15年(2003)

 馬鞍は騎馬に際して用いられる座具の一式。人がまたがる木製の鞍橋(くらぼね)、鞍橋の座面に敷く鞍褥(くらじき)、鞍橋の下に取り付けて馬への衝撃を和らげる韉(したぐら)、馬の背に直接当てる屧脊(なめ)、乗馬の足掛かりとなる鐙(あぶみ)などで構成される。本品は、正倉院に伝わった計10組の馬鞍の1組。鞍橋は、前輪(まえわ)と後輪(しずわ)(前後につけられた山形の部位)にクワ、居木(いぎ)(前・後輪の間にわたす部位)にカシをそれぞれ素木のまま用いた簡素なつくりであるが、座具として微妙な曲面をもつ形状に仕上げる点に高度な木工技術を示す。一方、鞍褥や屧脊には、花喰鳥(はなくいどり)や唐花文を染料で染め抜いた皮革(鹿革か)を用いており、質実な造形の中に華やかさを添える。馬鞍を構成するパーツを皆具した、奈良時代の馬具の実態を伝える貴重な遺品である。

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