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HOME > 展示案内 - 特別展・特別陳列 > 御即位記念 第71回 正倉院展

第71回正倉院展

 本年の正倉院展は、北倉14件、中倉8件、南倉17件、聖語蔵2件の41件の宝物が出陳されます。そのうちの4件は初出陳です。正倉院宝物の全体像がうかがわれる構成となっておりますが、天皇陛下の御即位を記念し、正倉院宝物の成り立ちと伝来に関わる宝物や、宝庫を代表する宝物が顔を揃えることが特筆されます。  
 聖武天皇・光明皇后ゆかりの品を伝える北倉からは、『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』の筆頭に掲げられた「御袈裟合玖領」のうち七條刺納樹皮色袈裟(しちじょうしのうじゅひしょくのけさ)が出陳されます。聖武天皇の仏教への帰依(きえ)を象徴するような品で、東大寺大仏への宝物献納(けんのう)に込められた光明皇后の強い思いがうかがわれます。また、天武天皇以来、聖武天皇を経て孝謙天皇に至るまで、6代にわたって相承されてきた赤漆文欟木御厨子(せきしつぶんかんぼくのおんずし)には、聖武天皇・光明皇后の大切な品が納められていました。今回は本厨子とともに、ここに納められていた遺愛品として、紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)・緑牙撥鏤尺(りょくげばちるのしゃく)が出陳されます。さらに、光明皇后の父・藤原不比等(ふじわらのふひと)(659~720)の真跡(しんせき)が表された屏風(びょうぶ)を献納した際の目録である天平宝字二年十月一日献物帳(てんぴょうほうじにねんじゅうがつついたちけんもつちょう) 藤原公真跡屏風帳(ふじわらこうしんせきびょうぶちょう)も、屏風自体は伝わらないものの、正倉院宝物の成り立ちを知る上で極めて重要な品といえます。このほか、聖武天皇らが着用したとされ、後世、天皇即位時の礼服(らいふく)・礼冠(らいかん)を調進する際に、しばしば参考に供された冠の一部を伝える礼服御冠残欠(らいふくおんかんむりざんけつ)が、御即位を記念する今回の展観に出陳されるのも大変意義深く思われます。  
 一方、本年は、紅牙撥鏤尺、金銀平文琴(きんぎんひょうもんきん)、金銀花盤(きんぎんのかばん)といった、中国・唐代の高度な工芸技術を伝える宝物や、目にも鮮やかな粉地彩絵八角几(ふんじさいえのはっかくき)など、平城京に花開いた華やかな天平文化を伝える品々が出陳され、展示室を彩ります。また、ペルシアで流行した樹下人物図の系譜に連なる鳥毛立女屏風(とりげりつじょのびょうぶ)や、アフガニスタンが主産地であるラピスラズリを用いた紺玉帯残欠(こんぎょくのおびざんけつ)などの宝物からは、シルクロードを通じてもたらされた異国の文化が感じられます。  
 このほか、荘厳(しょうごん)を極めた仏具の好例として知られる紫檀金鈿柄香炉(したんきんでんのえごうろ)、紺玉帯残欠を納めるにふさわしい一際(ひときわ)華やかな螺鈿箱(らでんのはこ)、聖武天皇の足下を飾った衲御礼履(のうのごらいり)など、宝庫を代表する宝物が豪華に揃う様は、新時代の幕開けを言祝(ことほ)ぐようです。

赤漆文欟木御厨子

赤漆文欟木御厨子

鳥毛立女屏風(第1扇)

鳥毛立女屏風(第1扇)

          
会 期 令和元年10月26日(土)~11月14日(木) 全20日
会 場 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日 会期中無休
開館時間 午前9時~午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月26日・27日、11月1日・2日・3日・4日・8日・9日・10日)は午後8時まで
※入館は閉館の30分前まで
注意事項 セキュリティ対策強化及び混雑緩和のため、45cm×35cm×20cmよりも大きな荷物は持ち込みを制限します。ご来場前に他所でお預けいただくか、博物館に設置される無料のコインロッカー・手荷物預かり所(運営時間8:00~18:00、開館延長日は20:00まで)をご利用ください。
また、例年、展示室内は混雑いたします。基準以下のお荷物も積極的にコインロッカー等にお預けいただき、身軽に正倉院展をお楽しみください。
なお、お客様の安全のため、キャリーバッグは大きさに関わらず持ち込み禁止とさせていただきますので、ご協力をお願いいたします。
 
また、混雑した展示室内では他のお客様の視界を遮る可能性があるため、帽子は脱いでいただきますようお願いいたします。
観覧料金
  当日 前売・団体 オータム
レイト
一般 1,100円 1,000円 800円
高校生
大学生
700円 600円 500円
小学生
中学生
400円 300円 200円
親子ペア 1,100円
(前売)
セット券 2,500円 2,300円
(前売)

※ 団体は責任者が引率する20名以上です。
※ 混雑緩和のため、11月3日(日・祝)は「団体入場規制日」として、団体専用入場口はご利用いただけません。
※ 前売券の販売は、7月19日(金)から10月25日(金)までです。
※ 親子ペア観覧券は、一般1名と小・中学生1名がセットになった割引観覧券です。前売のみで、販売は主要プレイガイド、コンビニエンスストア(一部)に限ります。(当館観覧券売場では販売していません。)
※ セット券は、本展と東京国立博物館で開催される「御即位記念特別展 正倉院の世界」がセットになったチケットです。販売は主要プレイガイド、旅行代理店(一部)、コンビニエンスストア(一部)に限ります(当館観覧券売場では販売していません)。前売セット券の販売は、7月19日(金)から10月13日(日)まで、当日セット券の販売は、10月14日(月・祝)から11月13日(水)午後3時までです。
※ オータムレイトチケットは、月曜日~木曜日の午後4時30分以降、金曜日・土曜日・日曜日・祝日の午後6時30分以降に使用できる当日券です。当館当日券売場でのみ、月曜日~木曜日は午後3時30分より、金曜日・土曜日・日曜日・祝日は午後5時30分より販売します。
※ 観覧券は、当館観覧券売場のほか、近鉄主要駅、近畿日本ツーリスト、JR東海ツアーズ、dトラベル、日本旅行、LINEチケット、ローソンチケット[Lコード:58500]、セブン―イレブン、チケットぴあ[Pコード:769-846]、CNプレイガイド、イープラス、PassMe! など主要プレイガイド、一部旅行代理店、コンビニエンスストアで販売します。
※ 障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
※ 本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)も観覧できます。
奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は、当日券を400円で、職員の方は団体料金でお求めいただけます。観覧券売場にてキャンパスメンバーズ会員であることが分かる、学生証や職員証等をご提示ください。
※ 11月1日(金)は「留学生の日」のため、留学生の方は入館無料です。(学生証の提示が必要です。)
※ 11月14日(木)は御即位記念のため入館無料(なら仏像館・青銅器館を含む)です。

出陳品 41件(北倉14件、中倉8件、南倉17件、聖語蔵2件)
うち4件は初出陳
詳細 出陳品一覧はこちらへ
ボランティア解説 当館ボランティアによる「第71回 正倉院展」のみどころ解説を下記の予定で、期間中毎日、実施いたします。ご鑑賞の際に合わせて、ぜひご利用下さい。

期  間: 10月26日(土)~11月14日(木)の毎日
場  所: 講堂(各回、先着180名様まで)
料  金: 無料(ただし、正倉院展へ入館された方に限ります)
所要時間: 各30分

実施時間

第1回目 :10:00~
第2回目 :11:00~
第3回目 :13:00~
第4回目 :14:00~

※ただし、11月2日(土)、11月4日(月・振休)、11月9日(土)の各日の3回目と4回目は、講座や特別講演会のため実施いたしません。
ボランティアによる解説の実施一覧表は、
詳細 こちらへ

※各回、開始の20分前より開場します。毎年、ご好評につき各回満席になっております。聴講をご希望のお客様は、早めに講堂へお集まり下さい。
※都合により、ボランティアによる解説を実施できない場合もございますのでご了承ください。

特別講演会 11月4日(月・振休)「遺愛とその輝き」
中西 進 氏(高志の国文学館館長)
時間:13:30~15:00
会場:当館講堂  ※事前申込制
公開講座 11月2日(土)「正倉院に伝わる作り物をめぐって-仮山残欠を中心に-」
清水 健(当館学芸部工芸考古室長)
11月9日(土)「正倉院の風鐸-金銅鎮鐸について-」
細川 晋太郎 氏(宮内庁正倉院事務所保存課調査室員) ※詳しくはこちらへ
正倉院学術
シンポジウム2019
11月3日(日・祝) 「即位と正倉院宝物」
時間:13:00~17:30
会場:東大寺総合文化センター金鐘ホール  ※事前申込制
詳細詳しくはこちらへ
音声ガイド 第71回正倉院展の会場では、日本語プログラム(通常版/東大寺博士のまるわかりガイド)・外国語プログラム(英/中/韓)の音声ガイドをご利用いただけます。(各バージョン共に1台税込550円)
留学生の日 11月1日(金)を「留学生の日」と銘打ち、海外からの留学生の方を無料でご招待いたします。入館の際、学生証等をご提示ください。
会期中のイベント 「法華寺御流によるいけばなの展示」
 日程:会期中毎日
 場所:奈良国立博物館 西新館1階ロビー
 ※別途「第71回正倉院展」の入館券が必要です。
「野点のお茶会」
 日程:会期中毎日
 場所:奈良国立博物館 西新館南側ピロティー
 受付:西新館1Fロビー
 料金:600円
 時間:10時~17時30分(ただし、17時以降、お菓子がなくなり次第終了)
※別途「第71回正倉院展」の入館券が必要です。
担当一覧 詳細 詳しくはこちらへ
託児 「御即位記念 第71回 正倉院展」開催期間中、無料の託児室を開設しますのでご利用ください。
※事前予約制
※授乳・おむつ替えは、予約なしでご利用いただけます。
詳細 詳しくはこちらへ
よくある質問 正倉院展について「よくある質問」をまとめましたので、ご参考にしてください。
詳細 詳しくはこちらへ
主催 奈良国立博物館
協賛 岩谷産業、NTT西日本、関西電気保安協会、京都美術工芸大学、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、シオノギヘルスケア、ダイキン工業、大和ハウス工業、中西金属工業、丸一鋼管、大和農園
特別協力 読売新聞社
協力 NHK奈良放送局、奈良テレビ放送、日本香堂、仏教美術協会、ミネルヴァ書房、読売テレビ
関連リンク 読売新聞 「御即位記念 第71回正倉院展」
宮内庁正倉院事務所
チラシ

チラシ(PDF,2.6MB)

同時期開催の
展覧会
御即位記念特別展「正倉院の世界 ―皇室がまもり伝えた美―」

会期:令和元年10月14日(月・祝)~11月24日(日)

会場:東京国立博物館 平成館

主な出陳品

※単位は、寸法=センチメートル、重量=グラム   
※画像をクリックすると、より大きな画像が表示されます。

赤漆文欟木御厨子

北倉2 赤漆文欟木御厨子 [せきしつぶんかんぼくのおんずし]
(ケヤキの厨子) 1基
総高100.0 幅83.7 奥行40.6
前回出陳年=1998年(東京・2009年)

 聖武天皇と光明皇后の婚姻に際して相交わした品のように夫妻にとって殊に重要なものや、刀子(とうす)や帯、笏(しゃく)といった装身具、双六(すごろく)の駒や賽子(さいころ)、念珠、尺(ものさし)などの小物類、尺八など(北倉4~23)、身近に置かれた比較的小さな品々が納められていた大型の厨子(ずし)。天武天皇から、持統、文武、元正、聖武、孝謙と歴代の天武系の天皇に相伝されてきた非常に重要なもので、『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に「古様(こよう)の作」と記されるように、7世紀後半に遡(さかのぼ)る様式を示すと考えられる。

紅牙撥鏤尺 裏

紅牙撥鏤尺 表

北倉13 紅牙撥鏤尺 [こうげばちるのしゃく]
(染め象牙(ぞうげ)のものさし) 1枚
長30.3 幅3.0 厚1.0
前回出陳年=2006年

 象牙を染め、表面を浅く彫って文様(もんよう)を白く彫り表す撥鏤(ばちる)技法で装飾された華麗なものさし。表は1寸ごとの界線で10区にわけ、唐花文(からはなもん)5箇と鳳凰(ほうおう)、サンジャク、花状の角をもつ鹿(花鹿(はなじか))、飛鳥、鴨をそれぞれ交互に表している。裏は界線を表さず、サンジャク、ヤツガシラ、蓮華上で綬帯(じゅたい)を銜(くわ)える鴨、花鹿、オシドリを草花文と交互に配している。
 ものさしと考えられるものの一寸ごとの目盛りが表される程度で実用品とは考えられず、儀礼用に製作されたものと推測される。『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』の記述より、赤漆文欟木御厨子(せきしつぶんかんぼくのおんずし)(出陳番号1)に納められていた品の一つであると考えられる。

七條刺納樹皮色袈裟 七條刺納樹皮色袈裟 部分
部分

北倉1 七條刺納樹皮色袈裟
[しちじょうしのうじゅひしょくのけさ]
(刺縫(さしぬ)いの袈裟) 1領
縦145 幅262
前回出陳年=1987年

 光明皇后による聖武天皇遺愛の品の献納(けんのう)目録である『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』の筆頭に掲げられた9領の袈裟(けさ)のうちの1領。赤・青・黄・緑・茶などの平絹(へいけん)を不規則な形に裁ち、これらを刺縫(さしぬ)いの技法で継ぎ合わせて作られている。これは糞掃衣(ふんぞうえ)とも称される、端裂(はぎれ)を集めて縫い合わせ仕立てた袈裟に擬(なぞら)えたものと考えられ、袈裟の本義を踏まえたものと理解される。ただし、本品の場合は上質の裂(きれ)が用いられており、美しい樹皮風の配色も天皇の所用に相応(ふさわ)しい。

天平宝字二年十月一日献物帳 藤原公真跡屏風帳

北倉161 天平宝字二年十月一日献物帳 藤原公真跡屏風帳
[てんぴょうほうじにねんじゅうがつついたちけんもつちょう
 ふじわらこうしんせきびょうぶちょう]
(屏風の献納(けんのう)目録) 1巻
本紙縦28.8 全長85.5 軸長31.3
前回出陳年=1997年

 光明皇后による東大寺大仏への献物(けんもつ)は4度にわたって行われたが、本品はその掉尾(とうび)を飾る天平宝字2年(758)10月1日に行われた献納(けんのう)に係る目録。光明皇后が亡父・藤原不比等(ふじわらのふひと)(659~720)の真跡(しんせき)という屏風12扇を東大寺に献納したという内容で、願文(がんもん)に記された「妾(わらわ)の珍財、これに過ぐるはなし」(私にとってこれに勝る貴重なものはない)とのことばからは、皇后の父に対する強い思慕の念が伝わってくる。
 なお、屏風は後年出蔵されたとみられ、現存していない。

金銀平文琴 表

金銀平文琴 裏

金銀平文琴 表・部分
表・部分

北倉26 金銀平文琴 [きんぎんひょうもんきん]
(金銀飾りの琴) 1張
全長114.5 額の幅16.0 尾の幅13.0
前回出陳年=1999年

 琴(きん)は古代中国で成立した七絃(しちげん)の絃楽器。本体はキリ材製で、表面には黒漆(くろうるし)が塗られ、文様(もんよう)の形に切った金銀の薄板を表面に貼り付け、漆で塗り込めた後に文様部分を研(と)ぎ出して現す平文(ひょうもん)の技法によって、鳥(瑞鳥)や動物(霊獣)、草花、山岳、人物(高士(こうし)、飛仙)、波文などの文様が全体に施され、美しく装飾されている。
 なお、本品は、弘仁5年(814)に出蔵された『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』記載の別の琴に替わって、弘仁8年(817)に代納された品で、内部の墨書(ぼくしょ)より、唐の開元23年(735)に製作されたと推定されている。

鳥毛立女屏風 第3扇

第3扇

鳥毛立女屏風 第2扇

第2扇

鳥毛立女屏風 第1扇

第1扇

鳥毛立女屏風 第6扇

第6扇

鳥毛立女屏風 第5扇

第5扇

鳥毛立女屏風 第4扇

第4扇

北倉44 鳥毛立女屏風 [とりげりつじょのびょうぶ]
(鳥毛貼りの屏風) 6扇
[第1扇]縦135.9 横56.2 [第2扇]縦136.2 横56.2
[第3扇]縦135.8 横56.0 [第4扇]縦136.2 横56.2
[第5扇]縦136.2 横56.5 [第6扇]縦136.1 横56.4
前回出陳年 
第1・3扇=1999年(東京・2014年)  第2・4・5・6扇=2014年

 『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』記載の屏風(びょうぶ)で、各扇とも樹下に豊かに髪を結い上げたふくよかな女性を一人配する。第1扇から第3扇は立ち姿、第4扇から第6扇は岩に腰掛ける姿で表される。楮紙(ちょし)を貼り継いだ画面に白下地を施して描かれており、顔や手、着衣の袖口などに彩色(さいしき)が残り、着衣や樹木などには日本産のヤマドリの羽毛が貼り付けられていたことが微細な残片からわかる。
 盛唐の風俗を反映した豊満な「天平美人」として名高い本屏風が6扇揃って出陳されるのは、平成11年(1999)以来20年ぶりである。

礼服御冠残欠
礼服御冠残欠

北倉157 礼服御冠残欠 [らいふくおんかんむりざんけつ]
(冠の残片) 一括
葛形裁文(写真上:左下)横13.5 鳳凰形裁文(写真上:左下)縦9.7
前回出陳年=2002年

 正倉院宝庫に納められていた聖武天皇、光明皇后、孝謙天皇の御冠(おんかんむり)や、諸臣の礼冠(らいかん)が残欠(ざんけつ)となって伝来したもの。天皇の即位に際して、礼冠の手本とするため度々用いられたが、鎌倉時代の出蔵時に事故に遭い、損傷したと伝わる。附属の木牌(もくはい)の記載を参照すると、聖武天皇、光明皇后の御冠は天平勝宝4年(752)の大仏開眼会(かいげんえ)で着用された可能性が高い。国内外の様々な素材を用いた装飾を含んでおり、当時の国際色豊かな素材の使用が注目される。

衲御礼履

南倉66 衲御礼履 [のうのごらいり]
(儀式用のくつ) 1両
長31.5 爪先幅14.5 高12.5
前回出陳年=2014年

 爪先の反り上がった浅い靴。左右は同形。白い厚革を芯材とし、表面には赤く染めた牛革を用い、内面には鹿革の白革を使用している。爪先の扇形部分や側面と底と継ぎ目など革の断面が見える部分には白色を塗り、縫い目部分は金線をあしらって化粧を施している。表面には真珠やガラス、水晶を嵌(は)めた銀製鍍金(ときん)の花形の飾りを各13箇取り付けて、豪華に装飾を加えている。
 天平勝宝4年(752)4月9日に行われた大仏開眼会(だいぶつかいげんえ)にて、聖武天皇(当時は太上(だじょう)天皇)が履いたものと推測され、同じ時に使用された冠の部材を含むと考えられる礼服御冠残欠(らいふくおんかんむりざんけつ)(出陳番号11)とともに、当時の天皇の礼装を伝える品として貴重である。

紺玉帯残欠

中倉88 紺玉帯残欠 [こんぎょくのおびざんけつ]
(玉飾りの革帯(かわおび)) 1条
現存長156 幅3.3 巡方縦3.1 横3.6 丸鞆縦2.3 横3.3
前回出陳年=1999年(東京・2009年)

 紺玉(こんぎょく)すなわちラピスラズリで飾られた革帯(かわおび)。5片に分かれていたものを修理・接合した際に欠損部があったため、現状で2片に分離している。先端の鉸具(かこ)は銀製鍍金(ときん)、方形の巡方(じゅんぽう)、半円形の丸鞆(まるとも)、尾端の鉈尾(だび)はラピスラズリ製で、それぞれ革帯の裏面に銀製の座を取り付け、銀製の鋲で表から留められている。
 皇族あるいは高位の貴族の所持した最高級の帯と考えられ、あるいは刀子(とうす)等とともに東大寺の仏・菩薩(ぼさつ)に献納(けんのう)されたものかとも想像される。

螺鈿箱
螺鈿箱 身

中倉88 螺鈿箱
[らでんのはこ]
(紺玉帯(こんぎょくのおび)の箱) 1合
径25.8 高8.4
前回出陳年=1999年(東京・2009年)

 紺玉帯残欠(こんぎょくのおびざんけつ)を納めた木製、印籠蓋造(いんろうぶたづくり)の円形の箱。ヒノキ材を轆轤(ろくろ)で挽(ひ)いて成形しており、表面には黒漆(くろうるし)を塗布し、螺鈿(らでん)や、小四弁花文などの伏彩色(ふせざいしき)を施した水晶を用いて、唐花文様(からはなもんよう)や雲、鳥を表している。蓋表(ふたおもて)の中央の花弁には、文様の形に切り抜いた金板を漆で塗り込めた後に、文様部分の漆塗膜を剝(は)ぎ取って文様を表す平脱(へいだつ)の技法が用いられている。内側には、表に暈繝(うんげん)地に小花葉文(かようもん)を表した経錦(たてにしき)を、裏には浅緑地目交纐纈文(もっこうこうけちもん)の絁(あしぎぬ)をあしらった嚫(うちばり)を入れており、内外ともに大変煌(きら)びやかである。

粉地彩絵八角几
粉地彩絵八角几 脚部分
脚部分

中倉177 粉地彩絵八角几
[ふんじさいえのはっかくき]
(献物用の台) 1基
径41.0 高9.3
前回出陳年=1995年(東京・2009年)

 仏前への供物(くもつ)をのせる献物(けんもつき)。宝庫には東大寺の法要(ほうよう)や天皇・廷臣(ていしん)からの献物に用いたとみられる献物几が多数伝わるが、本品はその中でももっとも華麗な遺例として知られる。八稜形(はちりょうがた)(八方の先端が花弁(かべん)状に尖(とが)った形)の天板に、花先形(はなさきがた)の格狭間(こうざま)をもった床脚(しょうきゃく)と畳摺(たたみずり)がつく。表面全体に彩色(さいしき)が施され、特に側面に描かれた赤・青・緑・紫系の暈繝(うんげん)彩色(同系統の色を濃色から淡色に段階的に配列する彩色法)による花文は鮮やかである。

紫檀金鈿柄香炉
紫檀金鈿柄香炉 炉側面
炉側面

南倉52 紫檀金鈿柄香炉 [したんきんでんのえごうろ]
(柄付きの香炉) 1柄
長39.5 高7.6 炉径11.0
前回出陳年=2007年

 持ち手の柄(え)がついた香炉を柄香炉と呼ぶ。香炉は金属製が多いが、本品は火種を入れる内炉などを除く主要部をシタン製とする珍しい作例。柄の末端に獅子形(ししがた)のおもしをつける「獅子鎮柄香炉(ししちんえごうろ)」と呼ばれる形式である。炉やそれを支える台座、柄の表面には金象嵌(きんぞうがん)で花卉(かき)、蝶、飛鳥などを表し、伏彩色(ふせざいしき)を施した水晶を嵌(は)めるなど華麗な装飾が見られる。その美しさは柄香炉の遺例の中でも随一である。天応元年(781)の光仁天皇(こうにんてんのう)崩御(ほうぎょ)に際して東大寺に施入(せにゅう)された可能性が指摘されている。

金銀花盤
金銀花盤 盤面
盤面
金銀花盤 部分
部分

南倉18 金銀花盤 [きんぎんのかばん]
(花形の脚付き皿) 1基
径61.5 高13.2 重4496.2
前回出陳年=2009年

 六花形の銀製の皿で、宝庫伝来の盤の中ではもっとも大きく華麗な遺例。中央に大きく表された鹿は花状の角をもつ特徴的な姿で、正倉院宝物では紅牙撥鏤尺(こうげばちるのしゃく)(出陳番号2)にも用いられているが、中国・唐(とう)代の工芸品にしばしば登場するモチーフである。裏面の銘文に中国固有の重量の単位が記されるなど、中国製である可能性がきわめて高い。その大きさと豪華な装飾から、遣唐使が唐から公式に賜(たまわ)った品との見方もある。

子日目利箒

南倉75 子日目利箒 [ねのひのめときのほうき]
(儀式用の箒) 1柄
長65.0 把径3.9
前回出陳年=2009年

 天平宝字2年(758)正月3日(初子(はつね)の日)に催された宮中の儀式で用いられた箒(ほうき)。『万葉集(まんようしゅう)』巻二十には、この儀式で出席者に「玉箒(たまぼうき)」が下賜(かし)されたことが見え、その折に詔勅(しょうちょく)によって大伴家持(おおとものやかもち)が詠んだ一首「始春(はつはる)の初子の今日の玉箒(たまはばき) 手に執るからにゆらく玉の緒」が採録される。皇后自ら蚕室(さんしつ)を掃(は)き清めて養蚕(ようさん)の成功を祈るという中国由来の儀式に関わるものと考えられており、その名称は子の日に使用されたこと、素材がメドハギという植物とみなさたこと(実際にはコウヤボウキが素材)に由来する。

鏡背下絵
鏡背下絵
大大論戯画
大大論戯画

中倉18 続修正倉院古文書別集 第四十八巻
[ぞくしゅうしょうそういんこもんじょべっしゅう]
(鏡背文様(きょうはいもんよう)の下絵・人物戯画(ぎが)ほか) 1巻
前回出陳年=1999年

 様々な絵や文書(もんじょ)を貼り継いで1巻に仕立てたもの。第1紙は鏡の背面の下絵で、中心に葉形を組み合わせた鈕(ちゅう)(つまみ)の断面が表され、四神(しじん)のうちの青龍、朱雀(すざく)、玄武(げんぶ)の三神が瑞雲とともに描かれている。  
 第3紙は天平17年(745)4月1日で始まる帳簿が途中で反故(ほご)になったもので、余白に、目を大きく見開いて口を開け、上半身に力を漲(みなぎ)らせて肩を怒らせたひげ面の官人の姿を描く。脇には「大大論」と記されており、熱を帯びた議論の様を手遊(てすさ)びに描いた戯画(ぎが)であると考えられる。