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第70回正倉院展

 秋の奈良の風物詩ともいわれる正倉院展は、今年70回の節目を迎えます。今年は北倉(ほくそう)10件、中倉(ちゅうそう)16件、南倉(なんそう)27件、聖語蔵(しょうごぞう)3件の、合わせて56件の宝物が出陳されます。そのうちの10件は初出陳を含みます。
 今年は聖武天皇ゆかりの平螺鈿背八角鏡(へいらでんはいのはっかくきょう)をはじめ、沈香木画箱(じんこうもくがのはこ)、玳瑁螺鈿八角箱(たいまいらでんはっかくのはこ)、犀角如意(さいかくのにょい)など、珍貴な素材を惜しげもなく使い、技術の粋を尽くした華麗な工芸品が目を楽しませてくれることでしょう。
 一方、今も身近な素材である麻は、古来様々な用途に用いられ、麻布は税として地方から都に納められました。今年は平成25年度から27年度にかけ、宮内庁正倉院事務所によって行われた特別調査を踏まえ、麻を用いた様々な宝物が出陳されます。麻と人間の織りなす文化史に思いを馳(は)せてみてください。
 この他、正倉院宝物と同時代に、朝鮮半島に栄えた王国・新羅(しらぎ)に関わる宝物も多数出陳されます。唐との交流だけではない、奈良時代の多様な国際関係に、目を向けていただく機会となれば幸いです。
 近年の様々な成果を反映した平成最後の正倉院展を、宝物を伝えた奈良の地でお楽しみください。

玳瑁螺鈿八角箱

玳瑁螺鈿八角箱
(たいまいらでんはっかくのはこ)

玳瑁螺鈿八角箱(蓋表)

蓋表

待ち時間はこちらからご覧いただけます。
(読売新聞社のホームページにて混雑状況をお知らせしています。)

会 期 平成30年10月27日(土)~11月12日(月) 全17日
会 場 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日 会期中無休
開館時間 午前9時~午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月27日・28日、11月2日・3日・4日・9日・10日・11日)は午後8時まで
※入館は閉館の30分前まで
観覧料金
  当日 前売・団体 オータム
レイト
一般 1,100円 1,000円 800円
高校生
大学生
700円 600円 500円
小学生
中学生
400円 300円 200円
親子ペア 1,100円
(前売)

※前売券の販売は、9月12日(水)から10月26日(金)までです。
※親子ペア観覧券は、一般1名と小・中学生1名がセットになった割引観覧券です。前売のみで、販売は主要プレイガイド、コンビニエンスストア(一部)に限ります。(当館観覧券売場では販売していません。)
※観覧券は、当館観覧券売場のほか、近鉄主要駅、近畿日本ツーリスト、JR東海ツアーズ、PassMe!、dトラベル、日本旅行、ローソンチケット[Lコード:58400]、セブン・イレブン、チケットぴあ[Pコード:769-295]、CNプレイガイド、イープラスなど主要プレイガイド、コンビニエンスストアで販売します。
※団体は責任者が引率する20名以上です。
※オータムレイトチケットは、月曜日~木曜日の午後4時30分以降、金曜日・土曜日・日曜日・祝日の午後6時30分以降に使用できる当日券です。当館当日券売場でのみ、月曜日~木曜日は午後3時30分より、金曜日・土曜日・日曜日・祝日は午後5時30分より販売します。  
※障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
※本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)も観覧できます。
奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は、当日券を400円でお求めいただけます。観覧券売場にてキャンパスメンバーズ会員の学生であることを申し出、学生証をご提示ください。

出陳品 56件(北倉10件、中倉16件、南倉27件、聖語蔵3件)
うち10件は初出陳を含む
詳細 出陳品一覧はこちらへ
展覧会図録  A4版 152ページ 1,200円
*西新館1階会場内および、
 地下ミュージアムショップにて
 販売しております 。
*図録の購入はこちらへ 
図録
会場案内図 会場案内図・出陳宝物一覧・展示のみどころ等をまとめました。下記よりダウンロードしていただけます。※展示会場内でも配布しております。
詳細 会場案内図 PDF, 2MB
ボランティア解説 当館ボランティアによる「第70回 正倉院展」のみどころ解説を下記の予定で、期間中毎日、実施いたします。ご鑑賞の際に合わせて、ぜひご利用下さい。

期  間: 10月27日(土)~11月12日(月)の毎日
場  所: 講堂(各回、先着180名様まで)
料  金: 無料(ただし、正倉院展へ入館された方に限ります)
所要時間: 各30分

実施時間

第1回目 :10:00~
第2回目 :11:00~
第3回目 :13:00~
第4回目 :14:00~

※ただし、10月27日(土)、11月4日(日)、11月10日(土)の各日の3回目と4回目は、講座等のため実施いたしません。
ボランティアによる解説の実施一覧表は、
詳細 こちらへ

※各回、開始の20分前より開場します。毎年、ご好評につき各回満席になっております。聴講をご希望のお客様は、早めに講堂へお集まり下さい。
※都合により、ボランティアによる解説を実施できない場合もございますのでご了承ください。

公開講座 10月27日(土)「鳥兜様の楽帽の復元について」
山片 唯華子 氏(宮内庁正倉院事務所保存課調査室主任研究官)
11月4日(日)「月借銭のしくみ―古代の官営高利貸―」
栄原 永遠男 氏(大阪市立大学名誉教授)
11月10日(土)「正倉院三彩10話―正倉院に伝わる二彩・三彩陶器の特徴と謎―」
吉澤 悟(奈良国立博物館学芸部列品室長)
※詳しくはこちらへ
正倉院学術
シンポジウム2018
テーマ 「正倉院宝物と新羅」
日時:11月3日(土・祝) 午後1時
会場:東大寺総合文化センター金鐘ホール  ※事前申込制
詳細 詳しくはこちらへ
音声ガイド 第70回正倉院展の会場では、日本語プログラム・こどもプログラム・外国語プログラム(英/中/韓)の音声ガイドをご利用いただけます。(各バージョン共に1台税込520円)
留学生の日 11月1日(木)を「留学生の日」と銘打ち、海外からの留学生の方を無料でご招待いたします。入館の際、学生証等をご提示ください。
詳細 詳しくはこちらへ
会期中のイベント 「法華寺御流によるいけばなの展示」
 日程:会期中毎日
 場所:奈良国立博物館 西新館1階ロビー
 ※別途「第70回正倉院展」の入館券が必要です。
「野点のお茶会」
 日程:会期中毎日
 場所:奈良国立博物館 西新館南側ピロティー
 受付:西新館1Fロビー
 料金:500円
 時間:10時~17時頃(予定)
 ※別途「第70回正倉院展」の入館券が必要です。
 ※担当一覧はこちらへ
託児 「第70回正倉院展」開催期間中、無料の託児室を開設しますのでご利用ください。
※事前予約制
※授乳・おむつ替えは、予約なしでご利用いただけます。
詳細 詳しくはこちらへ
よくある質問 正倉院展について「よくある質問」をまとめましたので、ご参考にしてください。
詳細 詳しくはこちらへ
主催 奈良国立博物館
協賛 岩谷産業、NTT西日本、関西電気保安協会、キヤノン、京都美術工芸大学、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、シオノギヘルスケア、ダイキン工業、大和ハウス工業、白鶴酒造、丸一鋼管、大和農園
特別協力 読売新聞社
協力 NHK奈良放送局、奈良テレビ放送、日本香堂、仏教美術協会、ミネルヴァ書房、読売テレビ
関連リンク 読売新聞 「第70回正倉院展」
宮内庁正倉院事務所
チラシ

チラシ(PDF,1.4MB)

主な出陳品

※単位は、寸法=センチメートル、重量=グラム   
※画像をクリックすると、より大きな画像が表示されます。

平螺鈿背八角鏡

北倉42 平螺鈿背八角鏡
[へいらでんはいのはっかくきょう]
(螺鈿かざりの鏡) 1面
径32.8 縁厚0.7 重3514.8

 『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に記載された、聖武天皇ご遺愛の鏡。外形が八弁をかたどる八花鏡(はっかきょう)とよばれる形式をとる。鏡背面の装飾は、ヤコウガイに精緻な毛彫(けぼり)を施した螺鈿(らでん)を主とし、花弁や花心の赤い部分には彩色(さいしき)した上に琥碧(こはく)を伏せ、間地にはトルコ石の細片をちりばめる。鏡面は白銅(はくどう)製、鋳造(ちゅうぞう)で、蛍光エックス線を用いた調査によれば、本品の金属成分は中国鏡の成分比率と近いことから、唐からもたらされたものと考えられる。
 本品は鎌倉時代の寛喜2年(1230)の盗難にあった際に大きく破損したが、明治期に修理が行われた。

山水図 山水図 右部分
右部分
山水図 左部分
左部分

中倉14 山水図 [さんすいず]
(風景を描いた絵) 1張
縦59 横179

 麻布(あさぬの)に墨で山水景観を描いたもの。波の間に鳥が飛び、洲浜形(すはまがた)の島が描かれる。島には樹木が繁り、小舟と船頭のような人物、山を登る旅人の姿、草庵と獣皮らしき敷物に坐(ざ)す人物、その前に畏(かしこ)まるように坐す人物、騎馬の狩猟者らしき姿などが描かれている。画題は不詳であるが、奈良時代に流行した隠逸を主題にするとも、一種の理想郷を表したものとも解釈される。
 簡略な筆致ながら、穏やかな構成や細密な描写に、唐代の絵画を受容した後代のやまと絵に繋がる要素が見出され、遺例の少ない奈良時代の絵画として貴重である。
 用途も詳(つまび)らかではないが、室内に張り巡らし、障屏画(しょうへいが)のように用いたとする説がある。

繡線鞋[その1]
[その1]

北倉152 繡線鞋 [ぬいのせんがい]
(刺繡(ししゅう)かざりのくつ) 2両
[その1]長27.5 幅7.6 踵高3.4
[その2]長27.6 幅8.2 踵高3.3

 『屏風花氈等帳(びょうぶかせんとうちょう)』に記される「繡線鞋」に該当すると考えられる女性用の履物。甲の部分に花形の飾りが付くのが特徴で、爪先から花形飾りにかけ、刺繡(ししゅう)で装飾が加えられている。軽量で、絹や麻、紙などの素材で作られていることから、室内履きと考えられる。表面に使用されている花鳥文錦(かちょうもんにしき)の組織は、中国・唐代の遺例が知られ、また中国・新疆(しんきょう)自治区トルファン市のアスターナ381号墓から類品が出土していることなどから、中国製とみられる。
 高位の女性の所用品に相応しい華麗な品で、室内履きを用いた当時の宮廷での生活がうかがわれる点も興味深い。

櫃覆町形帯

南倉147 櫃覆町形帯 [ひつおおいのまちがたのおび]
(櫃覆いの押さえ帯) 1条
帯幅6 周長約340
初出陳

 「東大寺樻覆町形帯 天平勝寳八歳五月二日」の墨書(ぼくしょ)から、天平勝宝八歳(756)5月2日に崩御(ほうぎょ)した聖武天皇の葬送に関わる品を納めた櫃(ひつ)の覆いを押さえるために用いられたと考えられる帯。麻布(あさぬの)製の芯を赤絁(あかあしぎぬ)で包んだ帯を縦横2条ずつ交差させ、その周囲を同じ帯で囲んだ形状で(本品は一部が欠失)、「東大寺樻覆紐」と記された同様の紐が付く。類品が30点余り宝庫に伝来している。
 なお、近時の調査で、大麻(たいま)製と判明した麻布(あさぬの)の芯から「伊豆國印」及び「□□勝寳七歳十月」の墨書銘が確認され、伊豆国より貢納された調庸布(ちょうようふ)であることがわかった。

玳瑁螺鈿八角箱
玳瑁螺鈿八角箱 蓋表
蓋表

中倉146 玳瑁螺鈿八角箱 [たいまいらでんはっかくのはこ]
(献物箱(けんもつばこ)) 1合
長径39.2 高12.7

 八角形、印籠蓋造(いんろうぶたづくり)、木製の箱。表面全体に玳瑁(たいまい)を貼り、螺鈿(らでん)で文様(もんよう)を表す。
 蓋表(ふたおもて)は中央に大振りな唐花(からはな)を据え、連珠文帯(れんじゅもんたい)で8区に区切って、各間に雌雄の鴛鴦(おしどり)を交互に表している。蓋側面は花文を中央に配し、一対(いっつい)の鴛鴦を表す区画と、飛雲上に一対の飛鳥を表す区画とを交互に配している。身側面は形状を違(たが)える大振りな唐花文が交互に配置されている。
 花心には赤い色を地に塗った上に琥碧(こはく)と玳瑁を被せるなど、細部にまで珍貴な素材をふんだんに使用した一際(ひときわ)豪華な献物箱(けんもつばこ)で、壮麗な献納品を納めたものと想像される。また文様のパターンを交互に変えるなど、鑑賞者を飽きさせない工夫が凝らされている点も注目される。

沈香木画箱
沈香木画箱 蓋表
蓋表

中倉142 沈香木画箱 [じんこうもくがのはこ]
(献物箱(けんもつばこ)) 1合
縦12.0 横33.0 高8.9

 長方形、印籠蓋造(いんろうぶたづくり)、床脚(しょうきゃく)付の箱。表面に沈香(じんこう)とシタンの薄板を貼り、沈香の部分には金泥(きんでい)で文様(もんよう)を描いている。中央の区画には、小窓を開けて水晶製の薄板を嵌(は)め、地には動物や花卉(かき)などの文様を色彩豊かに表している。窓の周囲は矢羽根文(やばねもん)や甃文(いしだたみもん)の木画(もくが)で飾り、箱の稜角(りょうかく)にも木画をあしらって、細部まで豪華に装飾している。床脚には葡萄唐草(ぶどうからくさ)に鳥や獅子(しし)をあしらった透彫(すかしぼり)の象牙が嵌められており、足下から一際(ひときわ)壮麗に飾られているのが特徴的である。
 沈香、シタンといった豪華な素材を用い、彩絵、木画、牙彫(げちょう)など各種の技法を駆使して隙間なく装飾されており、献物箱(けんもつばこ)中屈指の優品として高名である。

雑葛形裁文
雑葛形裁文 鳳凰形裁文
鳳凰形裁文
雑葛形裁文 鴛鴦形裁文
鴛鴦形裁文

南倉165 雑葛形裁文 [ざつかずらがたのさいもん]
(楽舞(がくぶ)用のかぶりもののかざり金具) 1組
縦46.5 横62 他

 楽舞(がくぶ)に用いられたかぶりものの一部と考えられる残欠(ざんけつ)。
 金具を伴う大片やこれと同様の多数の金銅(こんどう)製透彫(すかしぼり)金具、本品の覆輪(ふくりん)だったとみなされる金銅縁輪(こんどうのふちわ)(出陳番号25)等の部材から当初の姿を復元すると、側面がエックス字型で、麻布(あさぬの)の芯に濃紫色の綾(あや)を張り、赤い平絹(へいけん)で裏打ちした金具を鋲留(びょうどめ)していたと考えられる。金具は中央に鳳凰形(ほうおうがた)をあしらい、斜め上に含綬鳥(がんじゅちょう)を置き、周囲に唐草文様(からくさもんよう)を配していたと推定される。縁には錦の縁裂がめぐらされていたことも明らかとなっている。
 非常に豪華なかぶりもので、壮麗な楽舞の様が偲ばれる。
 なお、今回は関係する金具類がまとめて出陳されるのも注目される。

錦紫綾紅臈纈絁間縫裳

南倉97 錦紫綾紅臈纈絁間縫裳
[にしきむらさきあやべにろうけちあしぎぬのまぬいのも]
(女性用の裳) 1腰
現存丈86 腰部幅81

 下半身に着用する巻きスカートのような装束(しょうぞく)で、裳(も)と名付けられるが裙(くん)と考えられる。女性が胸高に着用し、裾は足下に及ぶもので、奈良・中宮寺蔵天寿国繡帳(てんじゅこくしゅうちょう)(国宝)や高松塚古墳壁画(国宝)の女性像に例をみることができる。
 二つ折りした赤絁(あかあしぎぬ)の帯にスカート状の裂(きれ)を挟む構造で、裂の先端は失われている。袷(あわせ)仕立てで、表には赤地臈纈絁(ろうけちのあしぎぬ)、紫綾(むらさきあや)、緑系織り色綾の3種の細長く裁った裂を繰り返し継ぎ分けた縦縞の裂が用いられている。
 赤、紫、緑、黄の諸色を取り合わせた華やかな装束で、銘記は伴わないものの伎楽(ぎがく)などの楽舞(がくぶ)の装束であったとする説が示されている。

磁鼓

南倉114 磁鼓 [じこ]
(三彩のつづみの胴) 1口
長38.3 口径22.0 腰径10.9

 いわゆる奈良三彩(ならさんさい)の技法で焼かれた鼓(つづみ)の胴。両端に革を張って打ち鳴らされる。
 唐楽(とうがく)で使用された細腰皷(さいようこ)とみられ、口縁と長さの比率からそのうちの二鼓(にのつづみ)と考えられる。鼓胴(こどう)は木製が一般的であるが、極稀(ごくまれ)に陶製のものがあり、国内では京都府木津川市の馬場南(ばばみなみ)遺跡より須恵器(すえき)製の鼓胴が出土している。中国、朝鮮半島にも僅(わず)かに例があり、本品も中国製とする説が以前にはあったが、我が国特有の右回転の轆轤(ろくろ)で成形されていることから、国産品と考えられる。
 奈良三彩としては精良で、割れた部分を修補しているものの完形を備えており、類例の少ない陶製の鼓胴として非常に貴重である。

新羅琴

北倉35 新羅琴 [しらぎごと]
(弦楽器) 1張
全長154.2 幅上方で30.6 羊耳形幅37.0
附 柱(じ)4枚

 新羅琴(しらぎごと)は朝鮮半島に起源する12絃の琴。羊耳形の緒留(おど)めが付くのが特徴で、絃(げん)は緒留めの孔(あな)に通した長い麻製の緒にその端が留め付けられ、緒の端は一条にまとめられ綱状に綯(な)われている。
 本品は、胴はキリ材製、羊耳形緒留めと龍角(りゅうかく)はケヤキ材製で、表裏に金泥(きんでい)及び截金(きりかね)による文様(もんよう)が表されている。槽(そう)の片側に懸紐(かけひも)(ただし新補)が付いており、演奏に際し頸(くび)などに懸けて槽を支えるためのものとみる説がある。
  『雑物出入帳(ざつもつしゅつにゅうちょう)』(出陳番号33)によれば、弘仁十四年(823)2月19日に出蔵された「金鏤新羅琴」に代わって同年4月14日に代納されたもので、他の多くの北倉の宝物と伝来を異にしている。

白銅剪子

南倉33 白銅剪子 [はくどうのせんし]
(灯明の芯切りばさみ) 1挺
長22.6 重183.6

 白銅(はくどう)製の鋏(はさみ)。先端が半円形にふくらみ、長い柄には随所に蕨手(わらびて)状の飾りをつける。用途は従来不明とされてきたが、韓国・慶州(キョンジュ)市の月池(ウォルチ)(雁鴨池(アナプチ))より大きさと形の近い鋏が発掘され、この品の刃の部分に取り付けられた半輪形の金具は、刃が噛(か)み合うと一つの円形をなし切り取られた残片が落ちない仕組みとなることから、本品も燭台用の鋏と考えられるようになり、その後南倉の銅鉄類の残欠(ざんけつ)中より金具が発見され本来の姿を見せることとなった。
 本品の製作地は慎重な検討が必要であるが、新羅(しらぎ)との活発な交流を物語る品といえよう。

華厳経論帙
華厳経論帙 内貼文書
内貼文書

中倉59 華厳経論帙
[けごんきょうろんのちつ]
(経巻の包み) 1枚
縦29.5 横58.0

 巻子(かんす)装の経巻を一定数巻いて包み、保管するための紙製の用具。左上に「華嚴經論第七帙」の墨書(ぼくしょ)があり、六十巻本『華厳経(けごんきょう)』の注釈書である『華厳経論(けごんきょうろん)』百巻のうち何巻かを納めたものと思われる。
 芯の麻布を挟む内張(うちばり)の紙に新羅(しらぎ)の公文書の反故紙(ほごし)が用いられていることが知られており、『華厳経論』とともに新羅より舶載(はくさい)されたものと考えられる。新羅は華厳教学が盛んであり、我が国における華厳教学の中心である東大寺との交流がうかがわれる。
 ところで、前述の新羅の文書は、2片5張からなるもので、昭和八年(1933)の修理に際して取り出され、修理後は再び本体に戻されたため、現在は写真でしか確認できない。内容は4つの村落の明細を書き記したもので、村名、村落の面積、戸数、人口、家畜の頭数、耕地の面積、樹木の数、前回の調査以降の3年間の推移などを記録しており、新羅の社会経済史を研究する上で重要な史料となっている。

犀角如意

南倉51 犀角如意
[さいかくのにょい]
(犀角かざりの僧侶(そうりょ)の持物(じもつ)) 1柄
長58.0 掌の幅5.9

 如意(にょい)は僧侶(そうりょ)が法会(ほうえ)の際などに執(と)り、威儀(いぎ)を正すための道具。
 本品は掌の部分に犀角(さいかく)を用いた豪華な品で、掌の下方は、草花や蝶、鳥を表した、表は赤色、裏は青色の、花先形の撥鏤(ばちる)で飾っている。掌の付け根は、鳥や植物を透彫(すかしぼり)した象牙を被(かぶ)せて装飾している。柄(え)は板状で、金線で6区に劃(かく)し、赤・青に染めて花卉(かき)、蝶、鳥を表した撥鏤の板を交互に貼り付けている。中央には金製の八弁花文を配し、花心には地に彩色(さいしき)を施した水晶を嵌(は)めている。
 犀角や象牙、水晶や真珠、金など貴重な素材がふんだんに用いられた豪奢(ごうしゃ)な如意で、晴れやかな奈良時代の法会の様をうかがわせる。

仏像型

南倉153 仏像型
[ぶつぞうのかた]
(押出仏(おしだしぶつ)の型) 1面
縦16 横11.2 厚3.22 重4570

 古代寺院の荘厳(しょうごん)などに用いられた押出仏(おしだしぶつ)の型(かた)と思われるもので、同形同大のものが他に2面伝わる。銅製鋳造(ちゅうぞう)で、長方形の厚みのある銅板に二重円相(えんそう)の光背(こうはい)を負い、蓮台(れんだい)上に坐(ざ)す偏袒右肩(へんたんうけん)の如来形(にょらいぎょう)を高肉(たかにく)に鋳出(いだ)している。如来形は素髪(そはつ)とし、両手を腹前で衣の中に隠す、いわゆる化仏(けぶつ)の図像に表される。この型の上に銅板を置き、鎚(つち)で像容を打ち出したとみられるが、現在この型に合う押出仏は知られていない。
 尊像は、切れ長の目や鼻筋の通った張りのある面貌(めんぼう)に特徴が見出され、体軀(たいく)も堂々とした充実ぶりをみせており、奈良時代盛期の造像と考えられる。

続々修正倉院古文書 第四十帙第一巻

中倉20 続々修正倉院古文書 第四十帙第一巻
[(紙背)月借銭解(げっしゃくせんげ)ほか]
[ぞくぞくしゅうしょうそういんこもんじょ]
(写経生の借金の文書) 1巻

 月借銭(げっしゃくせん)とは、月ごとに一定の利息がかかる借銭、つまり現代でいう借金に当たるもので、写経所(しゃきょうしょ)の職員等がこの借銭を申請する際に提出したのが月借銭解(げっしゃくせんげ)である。月借銭解は申請書であると同時に借用証書でもあり、元本と利息が完済されるまで写経所で保管された。本巻に収める26通の月借銭解が書かれた宝亀三年(772)には、月ごとの利率は13%であった。この当時、写経所に所属していた職員のほとんどが借銭を繰り返していたが、必ずしも生活苦から借金を重ねたわけではなく、月借銭は写経所(または事務担当者)側が主導して銭を貸し付ける制度であったと考えられている。