一般に詩画軸は煩わしいほど多くの画賛で余白が埋められていて、本図ほど余白が生かされている例は少ない。上辺には三人の禅僧による画賛が行儀よく並んでおり、江西龍派は俗世間から隔絶した山水の色と光とを称え、二人めの信仲明篤はこの図から春の兆しを感じ取っている。だが、最後の心田清播をも含めて三僧ともこの図においては木陰の書斎が主題であることを見逃してはいない。都の俗塵のなかでの生活を余儀なくさせられている禅僧にとって、理想郷は画中に求めるしかなかった。心田清播は文安2年(1445)5月という年月を記している。これによって画面の左右どちらかの片隅に重点をおいた、いわゆる辺角の景から雪舟のように中軸を明示した山水への転換が図られた時期が推測できる。この図は、一時代を画した周文が姿を消し、雪舟が育とうとしている日本水墨画界の重要な転回点を象徴する傑作である。
(宮島新一)
聖と隠者 山水に心を澄ます人々. 奈良国立博物館, 1999, p.216, no.109.
国宝 さんすいず(すいしょくらんこうず) 山水図(水色巒光図)
1幅
紙本 墨画 淡彩 掛幅
縦108.0 横32.7
室町時代 15世紀
文安2 1445

- H024143

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- 2014/03/11
- 全図

- H024144
- 2014/03/11
- 画面上1/2部分

- H024145
- 2014/03/11
- 画面下1/2部分

修理前
- D026467
- 2000/12/15
- 全図

修理前
- D026468
- 2000/12/15
- 賛文部分

修理前
- D026469
- 2000/12/15
- 山水図部分

修理前
- D018294
- 1997/05/16
- 全図

修理前
- D018297
- 1997/05/16
- 山水図部分

修理前
- D018298
- 1997/05/16
- 画上部賛文部分

修理前
- A026557
- 2000/12/15
- 全図

修理前
- A026559
- 2000/12/15
- 賛文部分

修理前
- A026560
- 2000/12/15
- 山水図部分

修理前
- A025054
- 1997/05/16
- 全図

修理前
- A025056
- 1997/05/16
- 山水図部分

修理前
- A025057
- 1997/05/16
- 画上部賛文部分
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収蔵品番号 | 1220-0 |
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部 門 | 絵画 |
部門番号 | 絵229 |
銘 文 | 江西龍派賛「水色巒光隔世塵 松筠深處四無隣 主人猶有読書念 恐被山英咲濫巾 眞〓叟龍派「江西〈印〉」「木蛇叟〈印〉」」、信忠以篤賛「野水氷消緑蘸春 漁郎繋繿葦江濱 微鐘扣落寒山月 猶有書燈未睡人 松花山人以篤「明篤〈印〉」」、心田清播賛「上方楼閣下方居 佳水奇山畫不如 待我秋来乞帰去 碧蘆湾口狎樵漁 文安乙丑夏五吉辰 嘉隠主清播「留月叟〈印〉」」 |
作品関係者 | 伝周文筆、江西龍派賛、信忠以篤賛、心田清播賛、 |
指定名称 | 紙本墨画淡彩山水図 伝周文筆 文安二年心田清播等三僧の賛がある |
指定番号 | 絵83 |
指定年月日 | 昭和28年11月14日 国宝、昭和8年1月23日 重文 |
文 献 | 奈良国立博物館蔵品図版目録 仏教絵画篇. 奈良国立博物館, 2002, 169p.聖と隠者:山水に心を澄ます人々. 奈良国立博物館, 1999, 242p. |