飛鳥時代を代表する工芸品として名高い、国宝・玉虫厨子の模造である。この厨子は台座の上に入母屋造(いりもやづくり)の宮殿部(くうでんぶ)をのせた形式で、宮殿部の正面、両側面の三方に扉を開けている。基壇と宮殿部とも木製黒漆塗で、油絵の一種である密陀絵(みつだえ)と漆を併用して図様を描いている。基壇は正面に供養図、側面に釈迦生前の故事である捨身飼虎図(しゃしんしこず)と施身聞掲図(せしんもんげず)、背面に須弥山図(しゅみせんず)が描かれ、宮殿部は正面扉に天部像、側面扉に菩薩像、背面に神仙世界(所説あり)が描かれるほか、所々に飛天や山岳などが描かれている。宮殿内部には押出の千体仏が貼られている。柱や框、長押には金銅透彫金具(こんどうすかしぼりかなぐ)が飾られているが、宮殿部ではその下に玉虫の羽が敷き詰められている。
吉田立斎(よしだりっさい)(一八六七~一九三五)は正倉院宝物や奈良の古社寺の文化財の修復に従事するかたわら、密陀絵や撥鏤(ばちる)などの失われた古代の工芸技術の復元を行った人物である。玉虫厨子の模造は生涯に四度取り組み、これは最後の大正十年の作である。密陀絵を併用せず漆絵(うるしえ)だけが用いられていること、玉虫の羽を細かく切って金具の透彫部分に嵌め込んでいる点などがオリジナルと異なるが、全体としてきわめて忠実な高水準の模造である。実作品を間近に観察することができる立場にあった立斎の集大成ともいうべき品である。
(内藤栄)
聖徳太子1390年御遠忌記念 法隆寺展, 2012, p.162
たまむしずし もぞう 玉虫厨子 模造
1基
木製 黒漆塗 漆絵 金銅装
総高226.0 基壇幅137.2 基壇奥行119.5
漆工
大正時代 20世紀
1912~1926

- D042674

- H022570
- 2013/06/18
- 須弥座部背面須弥山世界図

- H022571
- 2013/06/18
- 宮殿部背面霊鷲山説法図1

- H022572
- 2013/06/18
- 宮殿部背面霊鷲山説法図2

- D042674
- 全体左斜

- D042675
- 全体正面

- D042677
- 全体背面

- D042678
- 全体右側面

- D042679
- 全体左側面

- A270500
- 全体左斜

- A270502
- 全体正面

- A270504
- 全体背面

- A270506
- 全体右側面

- A270508
- 全体左側面

- A270510
- 宮殿部正面扉二神将像(扉閉)

- A270511
- 宮殿部背面霊鷲山説法図

- A270512
- 宮殿部側面(扉開)厨子の左側面

- A270513
- 宮殿部側面扉二菩薩像(扉閉)厨子の左側面

- A270514
- 宮殿部側面扉二菩薩像(扉閉)厨子の右側面

- A270515
- 須弥座部正面舎利供養図

- A270516
- 須弥座部背面須弥山世界図

- A270517
- 須弥座部左側面捨身飼虎図(厨子の右側面)

- A270518
- 須弥座部右側面施身聞偈図(厨子の左側面)

- A270519
- 須弥座部反花部分
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収蔵品番号 | 1439-0 |
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部 門 | 工芸 |
区 分 | 漆工 |
部門番号 | 工334 |
文 献 |