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第69回正倉院展

 本年の正倉院展には、北倉10件、中倉25件、南倉20件、聖語蔵3件の、合わせて58件の宝物が出陳されます。そのうち初出陳を含むものは10件です。正倉院宝物の全貌が概観される内容となっておりますが、仏・菩薩(ぼさつ)への献物(けんもつ)と考えられる品々を含めた仏具(ぶつぐ)類の充実や、佩飾品(はいしょくひん)や帯などの腰回りを飾った品々が多く出陳される点が特色となっております。また、宮内庁正倉院事務所による最新の整理、調査の成果を反映した宝物が数多く出陳されることも特筆されます。   
 聖武天皇ゆかりの北倉からは、記念切手にも採用された高名な羊木臈纈屛風(ひつじきろうけちのびょうぶ)が出陳されます。樹下に羊を大きく表した異国情緒溢(あふ)れる図様(ずよう)が目を引きますが、わが国で作られたことが確実視されており、天平期における西方文化の受容を顕著に物語る遺例として注目されます。一方、鋳造された鏡2面はいずれも唐で製作されたと考えられるもので、海外よりもたらされた珍貴な品々に囲まれた聖武天皇のお暮らしぶりが偲ばれます。   
 また、アッシリアに起源を持つとされる楽器・箜篌(くご)の貴重な遺例である漆槽箜篌(うるしそうのくご)、インドに起源を持つ迦楼羅(かるら)の面、同じくインドに起源を持つ迦陵頻伽(かりょうびんが)があしらわれた最勝王経帙(さいしょうおうきょうのちつ)、ペルシア起源の器を中国で写したと考えられる緑瑠璃十二曲長坏(みどりるりのじゅうにきょくちょうはい)やわが国で製作されたと考えられる金銅八曲長坏(こんどうのはっきょくちょうはい)、異国情緒溢れる金銅水瓶(こんどうのすいびょう)などの宝物からは、各地に源流を持つ文化が結集し花開いた、国際色豊かな天平文化の様相がうかがわれます。   
 このほか、素材やかたち、製作地の異なる杯(さかづき)や伎楽面(ぎがくめん)、税として各地から貢納された麻布(あさぬの)や絁(あしぎぬ)、地方行政に関する文書(もんじょ)や東大寺の荘園に関する文書・地図などを通じて、奈良時代におけるわが国の国家形成や内外の交易についても、思いを馳せていただければ幸いです。

羊木臈纈屏風

羊木臈纈屏風
(ひつじきろうけちのびょうぶ)

待ち時間はこちらからご覧いただけます。
(読売新聞社のホームページにて混雑状況をお知らせしています。)

会 期 平成29年10月28日(土)~11月13日(月) 全17日
会 場 奈良国立博物館 東新館・西新館
休館日 会期中無休
開館時間 午前9時~午後6時
※金曜日、土曜日、日曜日、祝日(10月28日・29日、11月3日・4日・5日・10日・11日・12日)は午後8時まで
※入館は閉館の30分前まで
観覧料金
  当日 前売・団体 オータム
レイト
一般 1,100円 1,000円 800円
高校生
大学生
700円 600円 500円
小学生
中学生
400円 300円 200円
親子ペア 1,100円
(前売)

※前売券の販売は、9月13日(水)から10月27日(金)まで、当館観覧券売場、プレイガイド、コンビニエンスストア(一部)等にて販売いたします。
※親子ペア観覧券は、一般1名と小・中学生1名がセットになった割引観覧券です。前売のみで、販売は主要プレイガイド、コンビニエンスストア(一部)に限ります。(当館観覧券売場では販売していません。)
※観覧券は、当館観覧券売場のほか、近鉄主要駅、近畿日本ツーリスト、JR東海ツアーズ、JTB、日本旅行、ローソンチケット[Lコード:59988]、セブン・イレブン、チケットぴあ[Pコード:768-592]、CNプレイガイド、イープラスなどで販売します。
※団体は責任者が引率する20名以上です。
※オータムレイトチケットは、月曜日~木曜日の午後4時30分以降、金曜日・土曜日・日曜日・祝日の午後6時30分以降に使用できる当日券です。当館当日券売場でのみ、月曜日~木曜日は午後3時30分より、金曜日・土曜日・日曜日・祝日は午後5時30分より販売します。  
※障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
※本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)も観覧できます。
奈良国立博物館キャンパスメンバーズ会員の学生の方は、当日券を400円でお求めいただけます。観覧券売場にてキャンパスメンバーズ会員の学生であることを申し出、学生証をご提示ください。

出陳品 58件(北倉10件、中倉25件、南倉20件、聖語蔵3件)
うち初出陳を含むもの10件
詳細 出陳品一覧はこちらへ
展覧会図録  A4版 152ページ 1,200円
*西新館1階会場内および、
 地下ミュージアムショップにて
 販売しております 。
*図録の購入はこちらへ 
図録
会場案内図 会場案内図・出陳宝物一覧・展示のみどころ等をまとめました。下記よりダウンロードしていただけます。※展示会場内でも配布しております。
詳細 会場案内図 PDF,2.3MB
ボランティア解説 当館ボランティアによる「第69回 正倉院展」のみどころ解説を下記の予定で、期間中毎日、実施いたします。ご鑑賞の際に合わせて、ぜひご利用下さい。

期  間: 10月28日(土)~11月13日(月)の毎日
場  所: 講堂(各回、先着194名様まで)
料  金: 無料(ただし、正倉院展へ入館された方に限ります)
所要時間: 各30分

実施時間

第1回目 :10:00~
第2回目 :11:00~
第3回目 :12:00~
第4回目 :13:30~
第5回目 :14:30~

※ただし、10月28日(土)、11月4日(土)、11月11日(土)の各日の4回目と5回目は、講座等のため実施いたしません。
ボランティアによる解説の実施一覧表は、
詳細 こちらへ

※各回、開始の20分前より開場します。毎年、ご好評につき各回満席になっております。聴講をご希望のお客様は、早めに講堂へお集まり下さい。

公開講座 10月28日(土)「正倉院の臈纈技法について」
片岡 真純 氏(宮内庁正倉院事務所保存課整理室員)
11月4日(土)「正倉院の鏡」
中川 あや(奈良国立博物館学芸部主任研究員)
11月11日(土)「正倉院の屏風と蓮華蔵世界」
長岡 龍作 氏(東北大学大学院教授)
※詳しくはこちらへ
正倉院学術
シンポジウム2017
テーマ 「正倉院の色」
日時:11月3日(金・祝) 午後1時
会場:東大寺総合文化センター金鐘ホール  ※事前申込制
詳細 詳しくはこちらへ
音声ガイド 第69回正倉院展の会場では、日本語プログラム・こどもプログラム・外国語プログラム(英/中/韓)の音声ガイドをご利用いただけます。(各バージョン共に1台税込520円)
留学生の日 11月1日(水)は「留学生の日」と銘打ち、海外からの留学生の方を無料でご招待いたします。入館の際、学生証等をご提示ください。
詳細 詳しくはこちらへ
会期中のイベント 「法華寺御流によるいけばなの展示」
 日程:会期中毎日
 場所:奈良国立博物館 西新館1階ロビー
 ※別途「第69回正倉院展」の入館券が必要です。
「野点のお茶会」
 日程:会期中毎日
 場所:奈良国立博物館 西新館 南側ピロティー
 受付:西新館1Fロビー
 料金:500円
 時間:10時~17時頃(予定)
 ※別途「第69回正倉院展」の入館券が必要です。
 ※担当一覧はこちらへ
託児 「第69回正倉院展」開催期間中、無料の託児室を開設しますのでご利用ください。
※事前予約制
※授乳・おむつ替えは、予約なしでご利用いただけます。
詳細 詳しくはこちらへ
よくある質問 正倉院展について「よくある質問」をまとめましたので、ご参考にしてください。
詳細 詳しくはこちらへ
主催 奈良国立博物館
協賛 岩谷産業、NTT西日本、関西電気保安協会、キヤノン、京都美術工芸大学、近畿日本鉄道、JR東海、JR西日本、シオノギヘルスケア、ダイキン工業、大和ハウス工業、白鶴酒造、丸一鋼管、大和農園
特別協力 読売新聞社
協力 NHK奈良放送局、奈良テレビ放送、日本香堂、仏教美術協会、ミネルヴァ書房、読売テレビ
関連リンク 読売新聞 「第69回正倉院展」
宮内庁正倉院事務所
チラシ

チラシ(PDF,1.4MB)

主な出陳品

※単位は、寸法=センチメートル、重量=グラム   
※画像をクリックすると、より大きな画像が表示されます。

槃龍背八角鏡

北倉42 槃龍背八角鏡 [ばんりゅうはいのはっかくきょう]
(龍文様の鏡) 1面
径31.7 縁厚0.9 重4260
附 緋絁帯・題箋

 『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に記載されている、聖武天皇ご遺愛の白銅鏡(はくどうきょう)。外形が八弁をかたどる八花鏡(はっかきょう)とよばれる形式をとる。鏡背面の中心には亀形の鈕(ちゅう)(紐(ひも)を通す孔(あな)のあるつまみ)があり、鈕を囲むように2頭の龍が絡み合う。龍の下部には鴛鴦(えんおう)の遊ぶ山岳があり、そこから飛雲が吹き出ている。龍の上部に配された遠山(えんざん)や、流れる雲の表現から、天空を飛翔する龍の姿が表された図様(ずよう)を示すものといえよう。唐からの舶載品(はくさいひん)と考えられる。

羊木臈纈屏風

北倉44 羊木臈纈屛風 [ひつじきろうけちのびょうぶ]
(ろうけつ染めの屛風) 1扇
縦163.1 横55.9 本地縦154.6 本地横52.4

 『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に「臈纈屛風十畳」と記されるものの一部と推定される屛風(びょうぶ)の残欠(ざんけつ)。いわゆるろうけつ染めの技法で、樹下に佇(たたず)む羊を大きく表す。樹上には2頭の猿猴(えんこう)が遊び、下方には山頂に樹木が小さく表された険しい山岳が表される。山岳の左方の頂き近くには1頭の子鹿も添えられている。  
 本品に表されるような巻角(まきづの)の羊や樹下に動物を配する構図は、ササン朝ペルシアの美術に由来するが、下端部に調絁銘(ちょうのあしぎぬめい)と思われる墨書(ぼくしょ)があり、天平勝宝3年(751)以降にわが国で製作されたことがわかる。

玉尺八

北倉20 玉尺八 [ぎょくのしゃくはち]
(石製の縦笛) 1管
長34.4 吹口径2.0

 唐の2代皇帝・太宗(たいそう)のときに創製されたという古代の尺八は、当時は指孔(しこう)を前面5箇、背面を1箇として、今日の尺八が前面を4箇とするのとは異なった。
 本品は『国家珍宝帳(こっかちんぽうちょう)』に「玉尺八一管」と記されているものにあたる聖武天皇ゆかりの尺八。玉(ぎょく)と呼ばれているが大理石製と鑑定されている。尺八は本来竹製であるが、大理石を用いながら3節の竹管を忠実に模している。宝庫には北倉に5管、南倉に3管の、計8管の尺八が伝わるが、本品はその中でも最も短い。

漆槽箜篌
漆槽箜篌
漆槽箜篌 模造
漆槽箜篌 模造

南倉73 漆槽箜篌 [うるしそうのくご]
(漆塗の竪琴) 1張
槽現存長139.0 肘木長79.0
附 模造

 箜篌(くご)は竪形(たてがた)ハープの1種で、アッシリアに起源があるとされる。古代に中国・朝鮮半島・日本などで用いられたが、中世以降に姿を消した。
 本品は宝庫に伝わる2張の箜篌のうちの一つ。現在大破し残欠となっているが、槽(そう)とその下に続く頸・脚柱部をキリの一木(いちぼく)から作り、頸部にカキ材の肘木(ひじき)を挿し込む構造である。共鳴胴となる内を刳(く)った槽には、黒漆塗(くろうるしぬり)が施され、革で作った鳥獣文を貼付け、花文や山岳文を彩色するという、華やかな装飾がなされていたとみられる。彩色に使用されていた顔料(がんりょう)から、本品は日本で製作された可能性が高い。
 本展では明治期に製作された模造も展示する。

木画螺鈿双六局

中倉172 木画螺鈿双六局 [もくがらでんのすごろくきょく]
(遊戯の盤) 1基
縦33.0 横71.0 高11.3

 ボードゲームに使用された装飾性豊かな盤。双六局(すごろくきょく)の名称が付くが、中央がやや上に向かって蒲鉾(かまぼこ)状に湾曲(わんきょく)する形状から、後世のおはじきに似た遊戯である弾棋(たぎ)に用いられた盤ではないかと推測されている。  
 盤面は長方形で、四隅に刳(く)り形(がた)を設けた短い脚を付ける。表面はシタン貼りで、盤面には木画(もくが)による界線(かいせん)で長辺に各12箇の坪を表している。側面は象牙と木画の界線を用いて区画し、螺鈿(らでん)の花と錫象嵌(すずぞうがん)の茎で構成された唐花文(からはなもん)を各区に表している。  
 色味は少ないが、シタン地に螺鈿と象牙の白さの映える対照の美しさ、木画や金属線を用いた技巧の冴える遊戯具である。

伎楽面 迦楼羅 正面
正面
伎楽面 迦楼羅 左斜
左斜

南倉1 伎楽面 迦楼羅 [ぎがくめん かるら]
(伎楽の面) 1面
縦36.9 横19.3 奥行28.3 重408

 伎楽(ぎがく)は朝鮮半島・百済(くだら)の味摩之(みまし)が、中国・江南の呉(ご)国に学んで、わが国に伝えたとされる仮面舞踊劇。飛鳥から平安時代に寺院での法楽(ほうらく)として盛んに行われたが、その後衰退し、中世には途絶(とぜつ)したようである。  
 本品は、鶏冠(とさか)をつけ先端に玉を銜(くわ)えた尖った嘴(くちばし)を有する鳥貌(ちょうぼう)に表されることから、迦楼羅(かるら)の面と推定される。麻布(あさぬの)を漆で固めて表面を木屎漆(こくそうるし)で整えた乾漆造(かんしつづくり)の面で、緑青(ろくしょう)や朱、丹などを用いて彩色(さいしき)が施されている。損傷が著(いちじる)しかったが、近年修理が実施され、今回初めて出陳されることとなった。

碧地金銀絵箱
碧地金銀絵箱 蓋表
蓋表

中倉151 碧地金銀絵箱 [へきじきんぎんえのはこ]
(献物箱(けんもつばこ)) 1合
縦27.9 横17.5 高10.6

 仏・菩薩(ぼさつ)への献物(けんもつ)に用られた、美しく装飾された箱。長方形、印籠蓋造(いんろうぶたづくり)、ヒノキ材製で、下部に床脚(しょうきゃく)をめぐらし、内部には嚫(うちばり)を入れる。嚫は底部に八稜唐花文白綾(はちりょうからはなもんしろのあや)を、側面に長斑錦(ちょうはんきん)をあしらった豪華なもので、緑絁(あしぎぬ)の裏地が施されている。表面は群青(ぐんじょう)を用いて淡青色に塗られ、金銀泥(きんぎんでい)で花鳥の文様(もんよう)を描く。稜角(りょうかく)部分は押縁(おしぶち)風に蘇芳(すおう)色に塗られ、金銀泥による小花文を並べている。
 底裏に「千手堂」の墨書(ぼくしょ)あり、東大寺法華堂(ほっけどう)の東南に営まれ、中世以降に廃絶したと考えられる千手堂(せんじゅどう)にて用いられたものと考えられる。

銀盤

南倉14 銀盤 [ぎんばん]
(銀の脚付き皿) 1基
径42.0 高12.3 重2173.7

 銀製、脚付きの盤。盤は八稜形(はちりょうがた)で、底には葉の形をかたどった脚が4本取り付けられている。盤の外側の各稜には、蹴彫(けりぼり)(長三角形の彫り跡をつなげて点線を作る技法)で唐花文(からはなもん)を線刻し、この文様の部分のみ鍍金(ときん)を施している。本品の蹴彫は、奈良時代の金工品にしばしば見られる実線に近い蹴彫であることから、わが国で製作されたことがうかがえる。盤の裏面中央には「重大三斤三両」と線刻され、本品の重量を示している。

緑瑠璃十二曲長坏
緑瑠璃十二曲長坏 底面
底面

中倉72 緑瑠璃十二曲長坏 [みどりるりのじゅうにきょくちょうはい]
(ガラスのさかづき) 1口
長径22.5 短径10.7 高5.0 重775

 濃緑色を呈するガラス製の長楕円形(ちょうだえんけい)の杯(さかづき)である。ササン朝ペルシアの遺品にみられる器形を呈し、長側面の両側に半月形のひだが3段ずつ付き、口縁に12の屈曲ができることから十二曲長坏(じゅうにきょくちょうはい)とよばれる。ゆるやかな曲面に沿って植物文様が陰刻され、長側面の口縁近くにはうずくまるウサギ、短側面にはチューリップに似た大輪が表されている。鉛ガラス製で、鉛分を多く含んでいることから中国製と考えられるが、西方に由来する意匠を濃緑のガラスで作り上げた、異国情緒を感じさせる品として名高い。

金銅水瓶

南倉24 金銅水瓶 [こんどうのすいびょう]
(金メッキの銅の水差し) 1口
口径8.8 胴径11.2 注口長21.7 高19.0 重569.5

 鳥頭形の注口(ちゅうこう)が目をひく銅製鍍金(ときん)の水瓶(すいびょう)。胴部は扁平(へんぺい)な球形で、上部に広く口の開いた受水口、下方に裾広がりの高台(こうだい)、そして鳥頭形注口を先端に取り付けた細長い頸部(けいぶ)を側面に設けている。鳥頭の鶏冠(とさか)などの表現から、これは鳳凰(ほうおう)を表しているものと思われる。受水口の頸部や高台には素朴な花弁を刻んでいる。
 製作には、全体を10数箇所に分割して銅打ち出しで作り、複数の材を鑞(ろう)付けと鋲(びょう)留めを組み合わせて接合し、鍍金を施し仕上げるという工程がとられている。
 類品が知られていないエキゾチックな器形の水瓶を、高度で複雑な技術をもって作り上げたといえる本品は、宝庫の金工品の中では異色の存在である。

琥碧誦数

南倉55 琥碧誦数 [こはくのじゅず]
(こはくの念珠(ねんじゅ)) 1連
周長88
附 亀甲形漆箱

 様々な種類の珠(たま)が用いられた華やかな念珠(ねんじゅ)である。白組紐(くみひも)に通された119箇の通珠は琥碧(こはく)製、母珠は大きめの真珠製で、母珠の両脇には瑪瑙(めのう)製の珠が配される。母珠からは4条の房(ふさ)が伸び、それぞれ琥碧珠と、紫水晶珠あるいは真珠を用いた2箇の記子(きす)(房に付く珠)を通している。母珠の反対側にも房が付き、紫水晶珠と瑪瑙の管玉(くだたま)を通す。さらにその傍(かたわ)らにも小さめの真珠と水晶製の勾玉(まがたま)を通した房が付いている。  
 本品には漆皮(しっぴ)製の亀甲形(きっこうがた)の収納箱(出陳番号35-2)が附属しており、その蓋表の貼紙(はりがみ)にある墨書(ぼくしょ)より、本品が東大寺大仏開眼会(かいげんえ)に際し献納されたことが推測される。

東大寺開田地図
東大寺開田地図 部分
部分

中倉14 東大寺開田地図(越前国足羽郡糞置村田図)
[とうだいじかいでんちず(えちぜんのくにあすわぐんくそおきむらでんず)]
(東大寺の荘園の地図) 1張
縦68.5 横112.5

 東大寺の荘園の開発状況を記録した麻布(あさぬの)製の地図。縮尺は約1800分の1。越前国足羽郡糞置村(えちぜんのくにあすわぐんくそおきむら)に存した東大寺領糞置荘は現在の福井市帆谷町(ほたにちょう)・二上町(ふたがみちょう)に当たり、北を除く三方を山に囲まれ、南から尾根が張り出して2つの谷が形成された地形が、本図にもよく表れている。糞置荘については天平宝字3年(759)の地図も遺(のこ)るが、その後の係争とその解決を踏まえ、改めて作成されたのが天平神護2年(766)の年紀を有する本図である。  
 なお、東南院古文書(とうなんいんこもんじょ)第三櫃第十八巻(出陳番号39)は、本図に対応する記載を含む同年月日の文書であり、地図と文書とがともに伝わる点で大変貴重である。

沈香把玳瑁鞘金銀荘刀子

中倉131 沈香把玳瑁鞘金銀荘刀子
[じんこうのつかたいまいのさやきんぎんそうのとうす]
(小刀) 1口
全長16.1 把長7.8 鞘長11.2 身長6.2 茎長4.9

 刀子(とうす)は紙を切ったり木簡(もっかん)を削ったりするのに用いる文房具であり、また腰から提(さ)げて腰回りを飾る装身具としても用いられた。
 本品は鞘(さや)を玳瑁(たいまい)で飾った気品ある刀子である。沈香(じんこう)貼りの把は新補。鞘は木胎(もくたい)に金箔を押したうえに、黒い斑(ふ)の交じる玳瑁をかぶせて作られており、玳瑁の下に金色がのぞく伏彩色(ふせざいしき)の技法を見ることができる。鐺(こじり)(鞘尻(さやじり)金具)や鞘口には、唐草文(からくさもん)を透彫(すかしぼり)し鍍金(ときん)を施した銀製の金具を取り付ける。刀身(とうしん)は平造(ひらづくり)。鍛(きたえ)は板目(いため)で柾(まさ)が入り、刃文は直刃(すぐは)。茎(なかご)は剣先形(けんさきがた)を呈する。

最勝王経帙
最勝王経帙
組帯残片
組帯残片

中倉57 最勝王経帙 [さいしょうおうきょうのちつ]
(経巻のつつみ) 1枚 
縦30 横53

中倉202 組帯残片 [くみおびざんぺん]
(最勝王経帙の外帯の残片) 2片 
大片=長19.7 幅3.0

 経巻を数巻まとめて包むための帙(ちつ)。中央部分に織り表された「天下諸国毎塔安置金字金光明最勝王経」「依天平十四年歳在壬午春二月十四日勅」の銘文(めいぶん)から、天平13年(741)2月14日の詔勅(しょうちょく)を受けて各国毎に営まれた国分寺の塔に安置された金光明最勝王経(こんこうみょうきょうさいしょうおうきょう)の帙と考えられ、本品は大和国の東大寺安置分に該当するものとみられる(ただし『続日本紀(しょくにほんぎ)』に記される詔勅の年月日と銘文とでは1年の違いがある)。  
 近時の調査で、帰属不明の残片として整理されていた白茶地(しろちゃじ)朱暈繝斜格子文(しゅうんげんしゃごうしうもん)組帯残片(くみおびざんぺん)が、本品の外帯と幅や組み技法が共通することから、本体側の外帯の欠失する先端部分であることが明らかにされた。

三無性論 巻下 巻首
巻首
三無性論 巻下 巻尾
巻尾

聖語蔵4-6 三無性論 巻下 [さんむしょうろん]
(先一部一切経) 1巻
縦27.6

 聖語蔵(しょうごぞう)は、もと東大寺尊勝院(そんしょういん)の経蔵で、明治26年(1893)に皇室に献納された。現在約5000巻の経巻が伝わる。  
 本巻は従来称徳天皇発願(ほつがん)の神護景雲二年御願経(じんごけいうんにねんごがんきょう)に分類されていたが、近年の研究により、東大寺写経所において神護景雲4年(770)から宝亀2年(771)にかけて書写され、後に薬師寺に納められた先一部一切経(せんいちぶいっさいきょう)のうちの1巻であることが明らかにされた。  
 三無性論(さんむしょうろん)は護法(ごほう)(ダルマパーラ、530~561)の新唯識説(しんゆいしきせつ)以前の古唯識義によって三性三無性の説を述べたもので、古唯識義の研究史上重視される論書である。陳の真諦(しんだい)(499~569)が漢訳した。