京都・大将軍八神社の神像群とともに伝来したという神像で、右足を踏み下げて坐(すわ)る。瞋怒相(しんぬそう)で甲冑(かっちゅう)を着用した姿だが、平安後期彫刻らしい穏やかな表現が目立つ。今日大将軍八神社は祇園社(現・八坂神社)の祭神である牛頭天王(ごずてんのう)と同体の素戔嗚尊(すさのおのみこと)を主神とする。牛頭天王・大将軍神とも、恐ろしい疫神を慰撫して災厄を除くという信仰の対象だが、牛頭天王の彫像の中にも本像に似た着甲・踏み下げの作例があり、四天王など仏教の神将像の影響を受けて形成された、この種の神々の姿の系譜を考える上で興味深い。
なら仏像館 名品図録. 奈良国立博物館, 2010, p.114, no.148.
大将軍神は陰陽道(おんみょうどう)で東西南北の四方を司り、三年ごとに居を移すとされる方伯(ほうはく)の神で、大将軍神のいる方位は三年の間万事が塞がるとして忌まれた。大将軍神の信仰は平安時代より広く行われ、王城の鎮護として都の四方に置かれたとされる大将軍社をはじめとして各地で大将軍神像が造立されたが、その都の四方の大将軍社のうちの西方分にあたる京都上京区・大将軍八神社にも多数の作例が伝わっている。本像はこの大将軍八神社に伝来したとされる。同社の大将軍神像の像容には大別して、四天王や十二神将のように甲冑に身を固めた武装形のものと、巾子冠(こじかん)を頂き袍(ほう)を着け笏(しゃく)を持った俗形のものとがあるが、本作例は前者の一例である。床几(しょうぎ)の上に獣皮を敷き、その上に右足を踏み下げて坐る姿は、武装形ながらもおとなしく、12世紀の制作になるとみられる。一木造、彩色仕上げ。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.296, no.85.
| 収蔵品番号 | 846-0 |
|---|---|
| 部門 | 彫刻 |
| 区分 | 彫刻 |
| 部門番号 | 彫26 |
| 伝来 | 伝大将軍八神社(京都)伝来 |
| 図録 | 奈良国立博物館蔵品図版目録 彫刻篇 |
| 図版・文字掲載ページ | 54/109 |
| 文献 |
神仏習合:かみとほとけが織りなす信仰と美. 奈良国立博物館, 2007, 333p. 奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, 350p. 奈良国立博物館蔵品図版目録 彫刻篇. 奈良国立博物館, 1989, 111p. |

